16員環マクロライドFD-891はアクチンとアクチン結合タンパク質間のタンパク質-タンパク質間相互作用 (PPI) の阻害活性と抗腫瘍活性を有する。このような興味深い活性を有するFD-891の一次結合タンパク質の決定と結合様式の解明を行うことを目的としている。具体的には一次結合タンパク質が、FD-891のどこに、どのような相互作用をしているのか解明するとともに、一次結合タンパク質がアクチンかアクチン結合タンパク質であるか決定する。さらにPPIの阻害活性と抗腫瘍活性に相関があるか調査する。本研究により新規の抗腫瘍活性発現機構の発見に貢献する。 またPPIは様々な病気やシグナル伝達に関わっていることが知られているため、本研究により、アクチンとアクチン結合タンパク質間のPPI研究を発展させ、さらに様々な疾病の新薬開発に貢献する。昨年度、側鎖部における構造活性相関研究を行い、側鎖部の炭素鎖の全体の長さが抗腫瘍活性に重要であることが明らかになった。また共同研究者によってエポキシドは活性発現に重要であること、C10位の水酸基は活性にほぼ影響を与えないことが判明している。したがって私はC10位の水酸基を利用したFD-891のプローブ合成を行うことを計画した。C10位水酸基を利用した縮合反応によりYaoが開発したアルキンとジアジリンを有するミニマルリンカーと結合させることを計画した。種々の検討により、ミニマルリンカーと縮合させたマクロラクトンを収率42%で得ることに成功した。これは側鎖部とのカップリングを行うことでFD-891の標的タンパク質吊り上げのためのプローブとなるため、重要な合成中間体の合成に成功したと言える。
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