研究課題
1.昨年から継続して解析中のHG002ゲノム上のアレル特異的メチル化領域については、①ゲノムインプリンティングの生じることが知られている遺伝子が統計的に有意に集積していること、②発現促進または発現抑制に関わるクロマチン修飾状態をもつ領域が、アレル特異的メチル化のない領域と比較してより集積していることなどが確かめられた。さらに、メチル化状態と発現状態との間に機能的な関連があることを確かめる為、発現解析データの利用可能なAK1ゲノムのロングリードデータからもアレル特異的メチル化データについても解析を進め、論文として発表の準備中である。2.一分子シーケンサから得られるロングリードによりメチル化を検出する手法を用いて、メダカの二種の系統のセントロメア繰返し配列上のメチル化状態を明らかにすることができた。その結果、一部の染色体においては高メチル化・低メチル化の領域が混在していることが見出された。異なるセントロメア繰返し領域における塩基配列上の特徴を比較したところ、このメチル化状態の差異には二種の系統の分離以降に生じたものがあることが示唆された。3.本年度の後半には、アレル特異的メチル化が生じる原因の一つと考えられるDNA上の構造変異がメチル化へ及ぼす影響を研究した。構造変異研究に実績の多い米ワシントン大学の共同研究先に滞在し、最新の構造変異検出アルゴリズムについて調査すると同時に、本研究で開発中の手法で得られたメチル化観測データとの統合を模索した。この滞在中に得られた結果の中には、特定のタイプの構造多型の存在と周辺のメチル化状態との間の相関を示唆する興味深い結果があった為、この関連を正確に特定するために現在も共同研究を継続している。
2: おおむね順調に進展している
1.遺伝子発現データを詳細に解析する技術をもつ研究者との共同研究を開始することができたため、アレル特異的なメチル化状態とアレル特異的発現状態との間に関連があることを確かめる分析が進んでいる。2.一分子シーケンサから得られるロングリードによりメチル化を検出する手法を用いて、メダカの二種の系統のセントロメア繰返し配列上で、一部の染色体においては高メチル化・低メチル化の領域が混在していることが見出され、異なるセントロメア繰返し領域における塩基配列上の特徴を比較したところ、このメチル化状態の差異には二種の系統の分離以降に生じたものがあることが示唆された。このことは、研究計画で予期された以上の成果であった。3.本年度の後半には、構造変異研究に実績の多い米ワシントン大学の共同研究先に滞在し、最新の構造変異検出アルゴリズムについて調査すると同時に、本研究で開発中の手法で得られたメチル化観測データとの統合を模索したが、この滞在中に得られた特定のタイプの構造多型の存在と周辺のメチル化状態との間の相関を示唆する結果をもとに、さらなる研究の広がりが期待できる。
本年度は本研究課題の最終年度であるため、研究成果の対外的発表について重点的に行う。アレル特異的メチル化状態とアレル特異的遺伝子発現の統合的な解析を論文にまとめ、本年度中の発表を目指す。また、繰返し配列とDNAメチル化の関連についても論文の投稿を目指す。研究成果であるアルゴリズムを広く利用可能なものとするため、米Pacific Bioscience社と共同で、同社の解析パイプラインへの組込みも共同で進める。
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Bioinformatics
巻: 32(19) ページ: 2911-2919
https://doi.org/10.1093/bioinformatics/btw360
https://github.com/hacone/AgIn