研究課題/領域番号 |
15J03696
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
阿如汗 神戸大学, 国際文化学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | 清末の内モンゴルにおける近代学堂の設立運営 / ハラチン地域 / 帰化城トゥメト地域 / グンサンノルブ / 奏定学堂章程 / 蒙漢同化政策 |
研究実績の概要 |
平成27年度においては、主に清末の内モンゴルにおける近代学堂の設立運営の具体相を考察した。そのために、モンゴルの各地域に各々の特徴が存在することを想定した上で、最も先進的であったと思われるハラチン(外藩モンゴル)と帰化城トゥメト(内属モンゴル)という2つの地域を選んで事例とした。そして、両地域とも、漢文の教授を重視していたことを指摘したうえ、ハラチン地域では清朝の政策に従いつつも自民族の復興を図ることを目的としていたことが確認できるが、一方の帰化城トゥメト地域における教育の近代化は、清朝政府から派遣された満洲人旗人官僚が辺境地帯の安定を考慮した上で、モンゴル人を治めるために、近代学校教育をモンゴル人の中で広げようとしたものであったことを明らかにした。その内容を、2015年5月30日に、「清末の内モンゴルにおける近代学校教育振興の実態―ハラチン地域と帰化城トゥメト地域の事例を中心にして―」というテーマで満族史研究会第30回大会において口頭発表し、12月末に『日本モンゴル学会紀要』に投稿した。 2015年6月4日から8月19日にかけて、中国の中国第一歴史档案館、中国第二歴史档案館、内モンゴル自治区トゥメト左旗档案局やモンゴル国のモンゴル国立アルヒーフ(公文書館)で清末から中華民国初期の教育関係史料を確認・入手した。そのうち、特に内モンゴル自治区トゥメト左旗档案局で中華民国初期の教育関係史料が大量に所蔵されていることを発見したため、多量の時間がかかった。今年度もその続きを入手して、博士論文で生かしたいと思う。2015年12月20日から2016年1月11日にかけて、再び中国第一歴史档案館で史料調査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度においては、主に清末の内モンゴルにおける近代学堂の設立運営の具体相を考察した。モンゴル王侯がいなかった帰化城トゥメト地域における近代的学校教育の開始情況が、モンゴル王侯が主導していたハラチン地域とはいかなる点で異なっていて、実際にはどのように実施されたのか。その担い手を比較しながら検討して、論文を発表した。また、内モンゴル自治区トゥメト左旗档案局で中華民国初期の教育関係史料が大量に所蔵されていることを発見したため、当初予定していた計画より多量の時間や旅費がかかったため、研究の進歩に多少影響があった。今年度もその続きを入手して、博士論文で生かしたいと思う。そして、南京にある中国第二歴史档案館で中華民国期の貴重な史料の所蔵を発見できたことは、今後研究を展開していくうえで、非常に有意義なことであると思う。
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今後の研究の推進方策 |
今年度から中華民国初期を中心に考察していきたいと思う。要するに、モンゴル地域を管理する行政機関が清朝の理藩院から中華民国の蒙蔵院へと変わる変化の中で、内モンゴルの教育事業がどのように変化していき、中華民国側の教育目標はどの程度達成されたのか、それが内モンゴルの近代史にいかなる影響を及ぼしたのか、等の問題について検討したい。具体的には、ハラチン(外藩モンゴル)と帰化城トゥメト(内属モンゴル)という2つの地域を選んで事例とし、それらの地域の中華民国初期における学校教育振興の実態を個々に明らかにし、その上で蒙蔵学校との相互関係を検証する。そのため、これまで入手してきた史料に加えて、6月に、台湾で内モンゴル近代史関係の史料を入手する。7月末から、再び内モンゴル自治区トゥメト左旗档案局で中華民国初期の教育関係史料を入手する。そして、博士論文の執筆に向けて頑張りたいと思う。
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