研究課題
人為選択に基づく作物の栽培化は、農業上、多数の有用な形質の作出に貢献してきた。芒(のげ)は、イネ科植物の種子先端に見られる突起状の構造物で、動物の毛や衣服に付着し種子散布に役立つ他、草食動物による捕食から保護する役割を持つ。しかし、この形質は播種や収穫時の妨げとなるため、Oryza sativa(アジア)、O. glaberrima(アフリカ)の両栽培イネでは芒の無い表現型が選抜されてきた。本研究では、イネの芒形成に関わる第8染色体上の原因遺伝子RAE2 (Regulator of Awn Elongation 2、申請時はAWN8と命名したが、論文投稿にあたり改名) を同定し、その機能を解明することを目的とした。O. glaberrimaは機能型のRAE2を保持しており、この遺伝子をO. sativaに導入すると芒が伸長する。また、O. sativaの染色体背景にO. glaberrimaの第8染色体が置換した有芒系統(GIL116)において、RAE2遺伝子の発現をノックダウンすると芒長がベクターコントロールに比べて短くなった。この結果から、RAE2は芒伸長を制御すると考えられる。また有芒系統(GLSL25)と無芒品種(Koshihikari)での各組織におけるRAE2遺伝子の発現量を比較し、未発達な穂(幼穂)では根・葉・茎に比べてRAE2遺伝子が10倍高く発現していることを明らかにした。さらに、in situ hybridization解析により、RAE2遺伝子は幼穂分化期初期に雄蕊、外頴および内頴の先端で高発現しており、発生が進むにつれて発現量が減少していくことを明らかにした。この結果は、ステージ別に分けたサンプルでの半定量PCRによっても裏付けられた。
2: おおむね順調に進展している
イネ第8染色体上に座上する芒形成原因遺伝子RAE2を同定し、そのRNAi体の作出によって芒伸長が抑制されることを示した。また発現解析によって、mRNAおよびタンパク質レベルでの幼穂特異的な発現パターンを示すことを明らかにしたため。
タマネギ表皮を用いた一過性発現系においてRAE2の細胞内局在を同定しようと試みたが、ポジコンであるSTOMAGENにおいてもアポプラストでのGFP蛍光は確認できなかった。この理由として、STOMAGENの論文ではカボチャ由来のシグナルペプチドを用いたキメラコンストラクトを用いており、野生型の配列では一過性発現系でうまく機能しないと考えられる。来年度はGFP融合コンストラクトではなく、pRAE2::GUS融合コンストラクトを作成し、器官レベルでの局在の解析に取り組む。
2015年9月第128回日本育種学会において、若手の会幹事の一人として企画したワークショップの概要、および企画内で使用したスクリプトを掲示したサイトである。
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Euphytica
巻: 9 ページ: 1-13
Plant Science
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doi: 10.1016/j.plantsci.2015.09.008.
G3 (Bethesda)
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10.1534/g3.115.020834.
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