研究実績の概要 |
近年、主要作物であるイネにおいて、植物内外のCO2濃度や気孔におけるCO2輸送活性が、光合成の活性やバイオマス増産に深く寄与していることが明らかにされた。しかし、イネにおけるCO2輸送体は未同定であったため、生体膜を介したCO2輸送のメカニズムは解明されていない。 本研究では、これまでにCO2を輸送することが報告されているアクアポリンという膜タンパク質に着目して、イネの持つ34種類のアクアポリンの中からCO2輸送活性を持つものを特定し、輸送機構を明らかにすることを目的とした。 まず我々は、酵母を用いた簡便なCO2輸送体候補遺伝子のスクリーニング法を開発し、イネ、オオムギ、シロイヌナズナの約70個の植物アクアポリンの中から、18個のアクアポリンがCO2輸送活性を有する可能性の高いことを見出した。この中には、これまでにCO2輸送能力を有することが報告されていないTIP型(Tonoplast Intrinsic Protein)およびNIP型(NOD26-like Intrinsic protein)のアクアポリンも含まれていた。中でもイネ液胞型アクアポリンOsTIP2;2は、オルソログの関係に当たるAtTIP2;1が葉緑体包膜に局在していることから(Ferro et al., 2010)、これも葉緑体包膜に局在しCO2を輸送している可能性が高いことが予想された。そこで我々は、OsTIP2;2に着目し、その組織内/細胞内の局在を緑色蛍光タンパクとの融合体や免疫抗体染色法で、光合成活性への影響を、形質転換イネを用いて調べた。その結果、OsTIP2;2はイネ植物体内においては葉緑体周囲および葉緑体の集まる何らかのオルガネラに、細胞コンパートメントレベルでは液胞や葉緑体の周囲に局在していることが確認され、OsTIP2;2を過剰発現したイネは、光合成活性が上昇するという知見が得られた。
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