研究課題/領域番号 |
15J03774
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
上松 篤史 愛媛大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | ポリユビキチン鎖結合タンパク質 / コムギ無細胞タンパク質合成系 / NF-κBシグナル / IFNシグナル |
研究実績の概要 |
本研究は、直鎖状ポリユビキチン鎖と相互作用するシグナル伝達関連タンパク質を網羅的に同定し、ポリユビキチン鎖形成により惹起されるシグナル伝達経路ネットワークの分子メカニズムの解明を目的とした。今年度は、昨年度のスクリーニングにより見出した複数種類のポリユビキチン鎖結合タンパク質のバイオインフォマティックス解析による本スクリーニングの信頼性の評価及びヒットタンパク質の生化学的な評価及び細胞生物学的解析によりポリユビキチン鎖形成により惹起されるシグナル伝達経路ネットワークの分子メカニズムの評価を行った。 【1】バイオインフォマティクス解析によるユビキチン結合ドメイン予測:昨年度行った20,000個タンパク質との相互作用解析の信頼性を評価する目的で、バイオインフォマティクス解析を行った結果、α-helixタイプ56種類の内20種類、Zinc Fingerタイプ23種類の内、11種類がスクリーニングにより見出された。また、興味深いことにどのタイプにも属さないタンパク質が16種類同定された。 【2】精製タンパク質を用いた直鎖状ポリユビキチン鎖結合タンパク質の特異性評価:精製タンパク質を用いた相互作用解析によりその影響を調べた。十分量の精製が確認された26種類のタンパク質を用いて直鎖状ポリユビキチン鎖及びモノユビキチンとの相互作用解析を行った結果、モノユビキチンとは結合を示さず、直鎖状ポリユビキチン鎖特異的に結合を示すタンパク質4種類を同定した。 【3】直鎖状ポリユビキチン鎖結合タンパク質の細胞内評価:スクリーニングにより同定した複数種類の直鎖状ポリユビキチン鎖結合タンパク質の細胞生物学的解析を行った。直鎖状ポリユビキチン鎖依存的なシグナル伝達経路として知られるNF-κBシグナル及びIFNシグナルの評価を行った結果、それぞれ4種類のタンパク質がシグナルを顕著に抑制していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はポリユビキチン鎖との結合から同定された新規タンパク質がCUEやUBD等のユビキチン結合ドメインを含んでいたが、実際の2万種スクリーニングの信頼性を評価する目的で新たにバイオインフォマティックスによる解析を加えた。その結果、α-helixタイプ56種類の内20種類、Zinc Fingerタイプ23種類の内、11種類がスクリーニングにより見出された上に、どのタイプにも属さない新規のタンパク質が16種類同定された。この評価系は当初の計画には含まれていなかったが、データベース上での公開を行う上で、非常に重要な情報であると考えている。 また、ポリユビキチン鎖依存的なタンパク質の生化学的な解析に関しては、当初の予定通り、直鎖状ポリユビキチン鎖(M1-Ub)及びモノユビキチン(Mono-Ub)との相互作用解析を行うことで、モノユビキチンとは結合を示さず、直鎖状ポリユビキチン鎖特異的に結合を示すタンパク質4種類を同定することに成功した。さらに、細胞内での評価に関しては、アラニン置換法や欠損変異体を用いることで、直鎖状ポリユビキチン鎖タンパク質との結合において重要な領域及びアミノ酸を同定することに成功した。加えて、ポリユビキチン鎖依存的なシグナル伝達経路として知られるNF-κBシグナルやIFNシグナルへの影響についても評価を行うことができ、細胞での評価においては当初の予定以上に進んでいるものと判断している。 まとめると、バイオインフォマティックス解析といった若干の変更点はあったが、研究自体は概ね順調に進展しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、細胞内においてポリユビキチン鎖依存的なシグナル伝達経路として知られるNF-κBシグナルやIFNシグナルへの影響を解析した結果から、それぞれのシグナルのどのタンパク質により惹起されるか、どの刺激により惹起されるかといった同定したタンパク質のさらなる解析を目的とすることで、研究目的であるポリユビキチン鎖により惹起されるタンパク質の解明を行う。具体的にはTNF-α刺激やTAK1、TRAF6といったNF-κBシグナルを活性化させるタンパク質と共発現することで同定タンパク質のポリユビキチン鎖とのメカニズム解明を行っていく。また、それぞれの活性化タンパク質によるシグナル活性を行った後に直鎖状ポリユビキチン鎖による免疫沈降により、結合を確認する予定であり、そのメカニズムについてさらに追求する。 また、生化学的な解析に関しては今年度行うことができなかったBiacoreによる同定タンパク質と直鎖状ポリユビキチン鎖とのアフィニティーを算出することで相互作用解析結果と同様であることを確認予定である。 最終的には、本研究により見出したスクリーニングでの網羅的解析結果及びこれまでの研究実績はポリユビキチン鎖により惹起されるタンパク質を解明する上で極めて重要な情報であると考えられるため、来年度すべての解析結果をデータベース化予定である。
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