今年度は、初年度のスクリーニングにより見出した複数種類のポリユビキチン鎖結合タンパク質(UBP: Ubiquitin Binding Protein)より、NF-κBシグナルに与えるUBPを選抜し、生化学的な評価及び細胞生物学的解析によりポリユビキチン鎖形成により惹起されるシグナル伝達経路ネットワークの分子メカニズムの評価を行った。 【1】UBPのユビキチン鎖特異性の評価:M1-Ub特異的に結合した3種類のUBP(euUBP2、euUBP17、euUBP19)がK48-Ub、K63-Ubにも結合するかを確認するために、当研究室において開発したAGIAタグを付加した3種類のUBPとM1、K48、K63の特異性を免疫沈降法により確認を行った。その結果、euUBP2においてはMono-Ubには結合を示さなかったものの、M1、K48、K63-Ubには全て結合を示すことが明らかとなった。また、euUBP17、euUBP19はMono-Ub及びK48-Ubには結合を示さず、K63、M1-Ub特異的に結合を示す興味深い実験結果を得た。 【2】ZFAND2B過剰発現による核内RelAの発現量の解析:NF-κBシグナルの制御が明らかとなったZFAND2BがNF-κBシグナルを抑制することは転写因子NF-κBの構成因子RelAの核タンパク量を細胞分画により解析した。その結果、野生型ZFAND2Bの過剰発現では核内のRelA量が減少していることを見出した。また、MT3変異体ではコントロールであるMOCKと変化が見られなかった(図3)。 これらの結果はLuciferase Assayの結果と一致しており、2万種スクリーニングにより見出したZFAND2Bが直鎖状ポリユビキチン鎖と結合することでNF-κBシグナルを抑制することを新規に見出した。
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