研究課題/領域番号 |
15J03833
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
藤田 諒 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 骨格筋幹細胞 / 骨格筋 / 筋ジストロフィー / CD44 |
研究実績の概要 |
本研究は、筋組織幹細胞であるサテライト細胞の階層性・非均質性の筋再生における生理的意義及び、その制御に関わる分子基盤を解き明かすことを目的とする。 本年度はサテライト細胞の階層性・非均質性の特徴を検証するべく、筋芽細胞株であるC2C12を用いてCD44 の発現を検証したところ、二層性の発現パターンを示した。そこで、次にCD44low, CD44High群をFACSAriaでソーティングし、細胞増殖速度、および骨格筋分化マーカー等の発現を比較した。CD44High集団はCD44Low集団に比べ、全体に対する割合は非常に多く(約70-80%)、また細胞増殖速度が有意に早いことが示唆された。しかし、骨格筋分化マーカーの発現に関して、大きな差は見られなかった。今後、この二つの細胞集団をソーティングして、実際に筋分化に差がみられるかどうかを検討するとともに、タイムラプス等を用いて二つの異なった集団がどのようにふるまうのかを可視化する。 またCD44が二層性の発現パターンであったことから、CD44の発現自体が筋分化等に影響を与えるか否かを検討するべく、siRNAを用いた実験を行った。siRNAの導入効率および、ノックダウン効率はflow cytometer で確認し、90%以上の効率でCD44発現が抑制されていた。 CD44発現を抑制すると、筋分化が促進する可能性が示唆された。実際、C2C12は筋分化時、CD44の発現が減少することから、この結果は非常にリーズナブルであると言える。今後は、CD44HighとCD44low 集団を分離し、それぞれにsiRNAを導入する実験も行い、非均質性の意義及びCD44の機能解析を中心に進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
組織幹細胞の数は生体内にそれほど多くないため、各実験に使える収量を確保するために多くのマウスを使用しなくてはならない。またその少なさのためか各実験間においてばらつきが多くなることもあり再現性の確認実験に多くの時間を費やしているのが現状である。しかし、現在は手技等が安定してきており、来年度は比較的安定した結果が得られ、研究がさらに加速することが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
GFPおよびDsRedを恒常的に発現するC2C12細胞を作成したため、この細胞を使用し、CD44High, Low集団の筋形成時の役割を明らかにしたいと考えている。GFPを持つCD44High集団と、DsRedを持つCD44Low集団をそれぞれ共培養し、筋形成時にどのようなふるまいをお互い示すのかリアルタイムで観察する。さらに生体から直接分離した骨格筋幹細胞でも起きる現象であることを証明するために、サテライト細胞でも同様の実験を行う。それぞれが異なったふるまいをし、筋形成をしていることが明らかとなれば、次世代シーケンサーを用いた網羅的遺伝子解析を行い、さらなる非均質性を規定する因子の同定につなげたいと考えている。またヒト培養骨格筋細胞においてもCD44の非均質性が確認できるかなども今後行っていきたい。
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