研究実績の概要 |
平成27年度は、八重山の調査に2度行き、白保方言、宮良方言、竹富方言に関して計17時間半の聞き取り調査を行い、方言を収録した。このときの調査結果と、過去の調査記録を用い、白保方言の文法の概要を発表した(中川ほか, 印刷中)。具体的には、琉球八重山語白保方言における、名詞・動詞・形容詞の形態論、連体詞、間投詞、副詞、品詞転換、名詞句、述語句に関する概要を記述した。九州大学の下地理則氏らを中心とした東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所のプロジェクト(通言語的・類型論的観点からみた琉球諸語のケースマーキング)に参加し、琉球諸語と日本語に見られる格標識の議論を行った。平成28年度も引き続き、このプロジェクトと共同で日琉諸語の名詞標識の研究をすすめる予定である。また、フィールドワークを研究者が行うことの一般的な問題点も議論した(中川・伝, 2016)。 さらに、日本語(東京方言)に関する調査を行い、コーパスと実験を用いて、助詞、語順、韻律と情報構造の関係をまとめた論文を発表した(Nakagawa, 2016)。平成28年度は、この論文において主に直感で判断されていた、ゼロ助詞の使用に関して、実験的な手法を用いて明らかにしてゆく予定である。 最後に、代表的な日本語の学習者コーパスであるKYコーパス検索ツール、KYコーパスが使われた研究に関して、早稲田大学の李在鎬氏と共著で発表を行った(Lee & Nakagawa, 2016)。
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