研究課題/領域番号 |
15J03908
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中島 実穂 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 自己注目 / 抑うつ / 省察 / 自己洞察 |
研究実績の概要 |
本研究は,自己注目の2側面を基礎として自己理解と抑うつの関連メカニズムを明らかにし,新しい抑うつ低減プログラムの提案に寄与することを目標としている。昨年度までの研究では適応的な自己注目である省察を促進することで,自己理解が向上し,抑うつを低減できることが示された。しかし,どうすれば省察を促進できるかの手法は未だ確立しておらず,現段階では介入につなげることが困難である。そこで本年度からの研究では,省察を自己理解を向上させる自己注目として捉え,どのような自己注目法が自己理解を高めるのかを検討した。 自己理解がどの程度適応的であるかを測る指標には,自己洞察を使用した。自己洞察とは,自身の感情,思考,行動の認識がどれほど主観的に明確であるかを示す概念である。本年度はまず,この自己洞察が自己理解の適応性を示す指標として妥当であるかどうかを,そのストレス緩和効果を検討することで調べた。適応的な自己理解は,ストレス耐性を向上させることで抑うつを低減すると考えられており,よって自己洞察が自己理解の適応性指標として妥当であるならば,抑うつに対するストレスの影響を緩和すると予測した。 これを検討するため,大学生と幅広い年代の一般サンプルを対象とした2時点縦断調査を実施した。大学生にはアンケート用紙を使用した質問紙調査を行い,一般サンプルにはインターネット上のオンライン調査を行った。その結果,自己洞察にはストレス緩和効果があることが概ね認められた。この結果は自己洞察が自己理解の適応性指標として相応しいことを示すものである。 さらに本年度は,自己洞察を向上させる要因についても検討を行った。その結果,マインドフルネスと自他一致度 (Self-other agreement)が自己洞察向上に関与することが示された。これは,省察促進法の開発に重要な糸口を与えるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
適応的な自己注目を介した抑うつ低減法開発に向け,本研究では着々と知見を見出し,その実現に近づいている。これまで介入が難しかった省察について,本研究では省察を自己理解を向上させる自己注目と再定義することで,その向上手段確立に近づいている。このことから,当初の計画以上に研究が進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究では,マインドフルネスと自他一致度が自己洞察の向上において重要であることが示された。この知見は,自己理解を向上させる自己注目が具体的にどのような特性であるかを示唆する重要なものである。しかしながら,マインドフルネス,自他一致度,自己洞察の関連の検討は,現在までのところ横断的なものに留まってしまっており,その因果関係は確証できない。よって本年度は縦断調査や実験法により,その因果関係を検証する。
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