研究課題/領域番号 |
15J03919
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
河野 通就 東京大学, 情報学環・学際情報学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | ヒューマンコンピュータインタラクション / アクチュエーション / 電力供給 / ユビキタスコンピューティング / ヒューマンオーグメンテーション |
研究実績の概要 |
本研究では,実世界に存在する物質に対して電力や動力を与え,それを駆動・センシングすることについて取り組んでいる.実世界空間に存在する多くの物質は動力を有しておらず,静的である.また多くの動的な物質の場合でも電力源を内蔵する必要があり,その物体の大きさや形状などに制約が生じてしまう.これらの物体に対して,本研究では,外部から動力や電力を供給可能にすることを目的としている.当初の研究実施計画では,このような場合についての電源問題について取り組むとしていた.電源を必要とするデバイスにおいて,多くの場合小型の電池などが用いられる.しかし,例えばリモコンなどのようなデバイスは人間直接触れて操作するとき以外は電源を必要としない.こうした人間と物体が直接触れてインタラクションが行われるデバイスについて人間を介して電力を供給することを考えた.人間側に電力があれば様々なデバイスが個々に電池が独立して内蔵されていなくても電力を共通して供給することが可能となる.これを可能とするために,人体に対して流すことのできる電気について,安全面に配慮したサーベイを行なった.またこれを元に導き出された安全基準を元に周波数・電圧・電流の出力を設計した回路を使用し,研究に取り組んだ.こうして人体を介した電力供給という新しいコンセプト・フレームワークを提案し,発表することができた.また本研究を進める上で行なった安全面の知識・サーベイについても論文化を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述した人体を介した電力供給というコンセプト・フレームワーク,実装とアプリケーションを提案した論文 "Intentio: Power Distribution through a Potentialized Human Body" をAugmented Human 2017という国際会議でフルペーパーとして発表を行なった.当該発表では,異なる周波数での設計で検討することついてフィードバックを得ることができた.またこの発表文献の作成に伴い,通年を通して,安全性について慎重な調査を行ってきた.この知見は当該分野において大変重要であると考えている.そのため,それらの安全基準やサーベイをまとめたジャーナルの執筆も行なった.本稿はProceedings of the ACM on Interactive, Mobile, Wearable and Ubiquitous Technologies (IMWUT) にロングペーパーとして投稿を行なった.こちらは採録こそされなかったものの,非常に高く評価する査読者もいた.また他の査読者から有益なフィードバックを得ることができた.これらのフィードバックを元に本ジャーナル論文を修正し,再度投稿することを予定している.
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今後の研究の推進方策 |
人体に対する電気の通電における安全基準及び関連研究のサーベイを行なったジャーナル論文の修正と投稿を予定している.また本研究での主要な研究対象としてはアクチュエーション・アクチュエータが挙げられる.人体が有する筋肉はこの点おいて非常に重要であると考えている.実際に,ここ数年のヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)の分野ではElectrical Muscle Stimulation (EMS) を使用した研究が非常に盛んとなってきている.その結果,電気刺激を用いた研究に関する知見は多く共有されており,ツールキット化なども進められていて,安全にかつ簡単に取り組むことが可能となってきた.そのため,この技術を使用し,人体に電気刺激を与えることによるアクチュエータの制御について取り組むことを考えている.現在は主に前腕部・脚部・表情筋の制御について検討を進めている.次年度中に前述したジャーナル論文の他,EMSを用いた研究についてそれぞれ論文を発表できることを目標とし,今後の研究を進めて行く.
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