研究課題
1)神経細胞及びアストロサイト(iPast)の純化は、ほぼ100%のレベルで成功した。現在、今回開発したiPast誘導系について論文化を準備中。2)Kii ALS/PDCの病態モデルとしての解析について、複数の評価項目の内、本年度は部分的な評価に留まった。しかしながら、本疾患の病理学的病態として最も重要なリン酸化タウ(ptau)の神経細胞内蓄積の再現に成功した。ptauの分布は、細胞質内及びdendritesの中にも広がっていた。神経細胞-iPast共誘導系での評価から、ptauは主にiPastではなく神経細胞に蓄積していることがわかった。タウ蛋白の発現自体も、免染ではiPastではみられず、神経細胞のみで確認された。但し、患者脳内では、iPastにおいても著明にptauが蓄積することが知られており、iPastへのptauの蓄積様式が例えば神経細胞からの伝播によるものかなどの仮説を検証する必要がある。そのために、さらに培養期間を延長したり、過酸化水素による酸化ストレス負荷などの条件を検討していく。また、昨今類縁疾患であるGuam ALS/PDCにおいてタウ病理にかかわる新たな病態概念が報告された。PP2Aの活性が低下することで、タウのリン酸化が亢進し、ptauの蓄積が起こるというものである。そこでまず、今回誘導した神経細胞内でのPP2Aの発現を確認した。その結果、患者由来神経系細胞において、コントロール群と比較してPP2A mRNAの発現増加(2-6倍程度)を認めた。しかしながら、PP2Aの抑制シグナルであるI2PP2AのmRNAの増加(1.5-3倍程度)も併せて認め、PP2AのWestern blotではコントロール群と比較して有意な蛋白レベルの差は認められなかった。したがって、PP2Aの蛋白発現ではなくその活性自体に異常がある可能性が示唆され、今後活性状態の解析を行う。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度達成目標である、1)神経系細胞(神経細胞やグリア細胞それぞれについて)の純化には成功した。2)分化神経系細胞を用いたKii ALS/PDCの病態解析については、リン酸化タウの蓄積再現及びタウの異常リン酸化カスケードに寄与するメカニズムの一端を明らかにした。
次年度は、本年度明らかとなったリン酸化タウの病態解析やその改善薬の探索、更には他の異常蓄積蛋白であるα-synucleinやTDP-43についても引き続き検討を進めていく。
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Brain Pathol
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1111/bpa.12500
J Alzheimers Dis Parkinsonism
巻: 7 ページ: 1,3
10.4172/2161-0460.1000311
http://kii-als-pdc-project.com/