研究実績の概要 |
1)病態再現のための神経細胞-アストロサイト共培養系の確立 iPS細胞から、純度ほぼ100%の神経細胞およびアストロサイト(iPSC-derived astrocyte; iPast)を誘導し、生理的状況をより反映した神経細胞-アストロサイト共培養系(直接共培養およびCell Culture Insertsを用いた間接共培養)を構築した。 2)iPastの機能解析 新たに開発したhuman iPastについて、①iPast間を波状に伝わるCa2+ oscillation、②iPast同士が接する細胞境界部分におけるconnexin 43蛋白の高発現、③グルタミン酸の取り込み能、といった成熟アストロサイトとしての機能を確認した。 3)Kii ALS/PDC iPastの病態解析 健常者3名、Kii ALS/PDC患者5名のiPS細胞から誘導した各種神経系細胞についてマイクロアレイ解析を実施。分化過程を追って、かつ纏まりをもってクラスタリングがなされた。iPast群ではGFAPが高発現し、クラスタリング解析並びにPCA解析から、1)健常者群、2)Kii群3例、3)Kii群2例に分類されることが明らかとなった。加えてGO解析では、Kii ALS/PDC群においてタンパク質結合、エクソソーム、細胞外基質、細胞膜、Ca2+結合、ER関連などのキーワードが抽出された。さらに、健常者群との比較において、Kii群の1例でTransforming Growth Factor Beta 1(TGF-β1)遺伝子の発現上昇を認めた(58.6倍)。2015年に、遠藤、山中らにより、アストロサイト由来TGF-β1によるALS病態増悪についての報告がなされており(F Endo, et al. Cell Rep 2015)、Kii ALS/PDCにおいても病態の一部に寄与している可能性が示唆された。
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