北海道十勝地域のアライグマにおけるサルモネラ及びA群ロタウイルスの感染状況と上記2種の病原体が引き起こす主症状である下痢の家畜における発生状況、及びアライグマ生息地の景観構造との関連について、統計手法を用い精査した。初年度にも同様の解析を行っているが、本年度は統計手法について再検討を行った。加えて、アライグマに特徴的な痕跡である足跡を基準とした在・不在情報と生息地の景観構造との関連についても用いた統計手法について再検討を行った。その結果、アライグマにおける各病原体への感染状況と周辺の家畜における下痢症例発生状況との関連性を示す明確な結果を得ることはできなかった。その一方、アライグマの足跡は畜産農家が多く分布する場所において発見されやすく、本地域においてアライグマは畜産農家が多く分布する場所はアライグマにとって選好性が高い環境であり、このような場所を選択的に利用していることが考えられた。 本研究の結果から、アライグマが家畜の病原体伝播に関与しているのかについて言及することはできなかった。ただし、過去にアライグマからサルモネラを始めとする家畜に病原性を持つ細菌が分離されていること、畜産農家の多い場所でアライグマの痕跡が発見されやすかったことを踏まえるとアライグマによる病原体伝播の可能性を軽視することはできないだろう。また、本研究は景観レベルという大きなスケールでの解析を実施したため、アライグマの畜産農家の利用実態が考慮されていないことから、今後はアライグマによる畜産農家の利用実態を調査し、各種病原体の感染状況との関連についての検討が求められる。 本研究の結果は今年度開催された学術集会にて発表しており、論文投稿に向けて準備を行っている。
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