1. 石膏結晶の不斉表面を反応場とする不斉自己触媒反応:硫酸カルシウム二水和物(石膏)はアキラルな無機結晶である。石膏はエナンチオトピック面を持ち,この面上において不斉自己触媒反応を行ったところ,(010)面からはR体,(0-10)面からはS体のピリミジルアルカノールが高い鏡像体過剰率で生成することを見出した。本結果はアキラル無機結晶のエナンチオトピック面がホモキラリティーの起源として有効に作用し得ることを示すものである。 2. キラルな金クラスターを不斉開始剤とする不斉自己触媒反応:Au38(SC2H4Ph)24には互いに鏡像関係にあるMおよびP体が存在している。この金クラスターをキラルHPLCにより分割し,得られたキラル金クラスター用いる不斉自己触媒反応を行った。その結果,M体の金クラスター存在ではS体,P体のクラスター存在ではR体のアルカノールが不斉誘導されることを見出した。本結果はキラルな金属クラスターを用いて効率的な不斉合成を行った初めての例である。 3. 固相-気相条件下における不斉自己触媒反応による自発的絶対不斉合成:キラル要因が存在しない条件下,固相-気相条件下での不斉自己触媒反応を行い,自発的絶対不斉合成を試みた。複数回の反応を行ったところ,生成物の絶対配置の頻度は,R体が68回,S体が62回生成し,R体とS体の頻度がほぼ1:1となることが明らかとなった。本結果は固相-気相条件下において自発的絶対不斉合成を行った初めての例となる。
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