研究課題
本研究は、遺伝子改変マウスを多用し、歯根膜組織における間葉系幹細胞もしくは前駆細胞集団の局在や機能を同定し、同細胞群がどのようなプロセスで様々な間葉系細胞へと分化するのかを明らかにすることで、歯周組織の恒常性維持と再生機構の理解を深めることを目的としている。本年度は主に以下の3つの成果を得た。1.Nestin-GFPマウスおよびNestin-Cre;R26-Tomatoマウスの組織学的解析により、歯根膜組織中のNestin陽性細胞およびその系譜細胞が毛細血管近傍に位置することのみならず、その細胞体がIsolectin IB4陽性の血管内皮細胞の基底膜に覆われた周皮細胞様細胞であることも示した。さらに同マウスからNestin陽性細胞を単離し、in vitroにおいて、高い自己複製能と多分化能を持つことを明らかとした。歯根膜組織中の間葉系幹細胞もしくは前駆細胞がNestin陽性の周皮細胞であることが示唆された。2.歯根膜組織および間葉系幹細胞特異的と報告されている遺伝子について、in situ hybridization法を用いて解析し、中でもAsporin/PLAP-1が歯根膜細胞を特異的に標識することを確認した。同手法にて歯根膜組織中の遺伝子発現を網羅的に解析した報告はなく、同組織の理解が深まるものと期待される。3.歯根膜細胞を特異的に標識する新規マウスの作製に向けて、そのターゲッティングベクターの設計と作成を行った。今後、ES細胞への導入、相同組換え体のスクリーニングを共同研究者と共に遂行する。以上の得られた結果を取りまとめ、国内外の学会で発表を行った。
2: おおむね順調に進展している
SPF動物実験施設の一時閉鎖により必要な遺伝子改変マウスの施設への導入が遅れたが、予定していた免疫組織学的解析、初代培養細胞の単離およびin vitroでの解析、さらに新規マウスのターゲッティングベクターの作成が進展したため。
計画している遺伝子改変マウスの導入を進め、現在までに遂行済みのものとは異なったアプローチを用いて歯根膜組織における間葉系幹細胞もしくは前駆細胞の同定を進める。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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