・「ハインリヒ・バルトの「実存の哲学」とカール・ヤスパース」、『宗教研究』第388号、日本宗教学会、2017年、25‐45頁。
本論では、カール・バルトの「忘れられた弟」、ハインリヒ・バルトを取り上げた。第二節で「実存の哲学」と『実存の哲学の概説』、『実存の認識』を主に用いて、ハインリヒ・バルトにおける「実存の哲学」を検討した。ついで第三節で「真正の実存主義と誤った実存主義」および「信仰の真理へと関わる実存の哲学の根本諸性格」を主に用いて、ハインリヒ・バルトにおける哲学と信仰の関係を考察した。ハインリヒ・バルトによれば、信仰が「真理においてある」のに対して、哲学はその真理を「追考する」。聖書の言葉が直接的なリアリティを持っているのに対して、哲学の概念はその追考にすぎない。「キリストにおける神の現象を哲学は発見しなかった」。すなわち「直接に語りかけるアクチュアリティの点で、また、投げ掛けられた問いと差し出された答えの徹底的な鋭さの点で」、哲学に対して信仰は優位に立っているのである。最後に第四節でハインリヒ・バルトとカール・ヤスパースの関係を明らかにした。
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