本研究「LGBT家族のグローバル構築に関する実証的国際研究―-家族社会学の再創造のために」を遂行するため、今年度前半は日本国内での調査研究、後半はアメリカ合衆国はサンフランシスコでの在外研究に従事した。 まず、日本では子育てに関心をもつLGBTのセルフヘルプグループAでの参与観察を継続し、さらに機縁法にて3名からインタビューの協力をえた。グループAとはかかわりのない1名の協力者にも追加インタビューを実施した。これらの成果として1)「産む」身体をもつレズビアン・バイセクシュアル女性とそのパートナーの女性を中心とする出産・子育てが可視化しつつあること、2)逆に「産む」身体を持たないゲイ・バイセクシュアル男性、MtFトランスジェンダーの子育てが間接的なものか、不可視化されていること、3)レズビアン・バイセクシュアル女性と精子提供者との新たな親密性の萌芽が見られること、を明らかにした。 次に、サンフランシスコでの在外研究中、文献研究やLGBT家族形成に関する各種シンポジウムの出席、インタビュー調査に取り組んだ。その結果、1)LGBT家族が人種・エスニシティ・階級・世代によって異なる経験をしていることを把握し、さらに2)LGBT家族のアドボカシー団体とのネットワーク作りに成功した。 在外研究では、LGBTが家族を形成する場に、人種・エスニシティ・階級・世代が交差するというインターセクショナリティの重要性を確認した。今後の日本におけるLGBT家族の研究では、インターセクショナリティの視点からの考察が課題となった。
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