研究実績の概要 |
レビー小体型認知症(DLB)は認知症の約20%を占め,日本ではアルツハイマー型認知症に次いで頻度の高い認知症性疾患である.70%以上の多くのDLBに「幻視」が生じる.「幻視」とは,現実には存在しない対象が見えるという視覚性の幻覚である.そしてDLBの幻視は,認知症の鑑別診断において,きわめて重要とされる.しかしながら,幻視は他者からは観察できないので,その評価が難しい.そこで近年,幻視と類似した錯視を誘発するパレイドリア・テストが開発され,幻視の評価において有用性が示されている(Uchiyama et al., 2012, Brain; Yokoi et al., 2014, Neuropsychologia). これまでパレイドリア・テストの臨床的有用性が示されたが,幻視の発現機序についてはいまだ明らかにされていない.日常臨床では,DLBの幻視が,恐怖や不安を感じやすい薄暗い場所や夕方の時間帯に悪化することが多く,幻視の発現には刺激外の要素である情動気分が関与することが古くから指摘されている.また先行研究のパレイドリア・テストの成績に文脈や事前知識などの刺激外の情報が関与することが示されている. このような背景から,本研究では,「恐怖」や「不安」などの刺激外の情動気分が,DLBの幻視と類似した錯視を誘発するパレイドリア・テストに与える影響を明らかにし,幻視の発現機序やその神経基盤を解明することが目的である.
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