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2016 年度 実績報告書

知覚対象外情報の計算モデル構築による、幻視の発現機序と神経基盤の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15J04040
研究機関東北大学

研究代表者

渡部 宏幸  東北大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2015-04-24 – 2018-03-31
キーワード認知症 / 精神症状 / 幻視 / 介護
研究実績の概要

レビー小体型認知症(DLB)は認知症の約20%を占め,アルツハイマー型認知症に次いで頻度の高い変性性認知症性疾患である.70%以上の多くのDLBに幻視が生じる.幻視とは,現実には存在しない対象が見えるという視覚性の幻覚である.そしてDLBの幻視は,認知症の鑑別診断において,きわめて重要とされる.しかしながら,幻視は他者からは見えないのでその評価が難しい.そこで近年,幻視と類似した錯視を誘発するパレイドリア・テストが開発され,幻視の評価において有用性が示されている(Uchiyama et al., 2012, Brain; Yokoi et al., 2014, Neuropsychologia).
これまでパレイドリア・テストの臨床的有用性が示されたが,幻視の発現機序や介護方法は明らかにされていない.日常臨床では,DLBの幻視が,恐怖や不安を感じやすい薄暗い場所や夕方の時間帯に悪化することが多く,幻視の発現には刺激外の要素である情動気分が関与することが古くから指摘されている.
このような背景から,本研究では,「恐怖」や「不安」などの情動気分が,DLBの幻視と類似した錯視を誘発するパレイドリア・テストに与える影響を明らかにし,幻視の発現機序や介護方法を明らかにすることが目的である.
平成27年度は,主にパレイドリア・テストの難易度の最適化を目的に,データ収集と課題の修正を行った.平成28年度は,そのパレイドリア・テストを,DLB患者36名に実施しデータを収集した.不安等の陰性気分がDLBの幻視と似た錯視であるパレイドリアを大幅に増強させた.この結果は幻視の発現に情動気分が関与することを示している.また不安を緩和することが,認知症患者の精神症状の軽減に繋がる可能性を示しており,認知症介護において非常に重要な知見である.今後は国際誌への論文化を図る.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成27年度は,情動気分を喚起させる前刺激と新たなパレイドリア・テストを作成した.情動感情は,陽性気分(明るい,楽しいなど),陰性気分(恐怖,不安など),中性気分(安静時)の3種類を対象とした.陽性気分を喚起させるために「落語」を,陰性気分を喚起させるために「怪談」を聞かせて各気分を誘発した.一方で何も聞かせなかった時の感情を,中性気分として設定した.また,新たなパレイドリア・テストはMATLABを用いて作成し,DLB患者に施行した.パレイドリア・テストの難易度が最適化されるまで,データ収集と課題の修正を行った.
平成28年度はそのパレイドリア・テストを,DLB患者36名に実施しデータを収集した.恐怖や不安等の陰性気分が,DLBの幻視と似た錯視であるパレイドリアを大幅に増強させることを確認した.仮説どおりの結果が得られており,研究は順調に進展している.

今後の研究の推進方策

平成29年度から,精神症状のないアルツハイマー病患者を対象に本実験を行い,データ収集および解析を行う予定である.また研究成果を国際誌に投稿する予定である.

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 抽象的態度の障害を呈した左側頭葉後下部出血の一例2017

    • 著者名/発表者名
      渡部宏幸,平山和美,古木ひとみ,貝梅由恵,濱田哲,原寛美,山尾涼子,今村徹
    • 雑誌名

      神経心理学

      巻: 1 ページ: 印刷中

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 意味性認知症の物体知識障害に様式間差,属性間差はあるのか?:クロスモーダル・マッチング課題による検討2017

    • 著者名/発表者名
      森田亜由美,西尾慶之,五味幸寛,渡部宏幸,成田渉,飯塚統,森悦朗
    • 雑誌名

      神経心理学

      巻: 1 ページ: 印刷中

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 目標語の音想起は困難だがモーラ数想起や長短弁別が可能な健忘失語の一例2017

    • 著者名/発表者名
      渡部宏幸,古木ひとみ,原寛美,今村徹
    • 雑誌名

      神経心理学

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The pareidolia test: a simple neuropsychological test measuring visual hallucination-like illusions2016

    • 著者名/発表者名
      Yasuyuki Mamiya, Yoshiyuki Nishio, Hiroyuki Watanabe, Kayoko Yokoi, Makoto Uchiyama, Toru Baba, Osamu Iizuka, Shigenori Kanno, Naoto Kamimura, Hiroaki Kazui, Mamoru Hashimoto, Manabu Ikeda, Chieko Takeshita, Tatsuo Shimomura, Etsuro Mori
    • 雑誌名

      PloS one

      巻: 11 ページ: e0154713

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0154713. eCollection 2016.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] 認知症疾患におけるパレイドリアの診断的意義2016

    • 著者名/発表者名
      渡部宏幸,西尾慶之
    • 雑誌名

      老年精神医学雑誌

      巻: 8 ページ: 857-861

  • [学会発表] 失語症・高次脳機能障害学研究のすすめ ―若手言語聴覚士の視点から―2016

    • 著者名/発表者名
      渡部宏幸
    • 学会等名
      第40回日本高次脳機能障害学会学術総会
    • 発表場所
      キッセイ文化ホール・松本市総合体育館(松本市)
    • 年月日
      2016-11-11 – 2016-11-12
    • 招待講演
  • [学会発表] 陰性気分による知覚錯誤の増強 ‐レビー小体型認知症における検討‐2016

    • 著者名/発表者名
      渡部宏幸,西尾慶之,間宮靖幸,飯塚統,馬場徹,下村辰雄,森悦朗
    • 学会等名
      第21回日本神経精神医学会
    • 発表場所
      くまもと県民交流館パレア(熊本市)
    • 年月日
      2016-09-17 – 2016-09-18

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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