研究課題/領域番号 |
15J04047
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研究機関 | 国際日本文化研究センター |
研究代表者 |
栗山 新也 国際日本文化研究センター, 研究部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 移民 / 楽器 / 沖縄芸能 / 物質文化 |
研究実績の概要 |
本年度は、研究計画のうち、沖縄での調査に絞り、三線文化に関する文献資料調査、聞き取り調査を実施した。文献資料調査では、沖縄で発行された新聞や雑誌に掲載された三線関係の記事、字誌に掲載された移民関係記事、の収集を行った。以上により、三線の製作・販売・材料の流通・継承などの歴史的推移、移民地での三線製作の状況、移民地から沖縄に戻ってきた「里帰り」三線の過去の記録などを明らかにした。聞き取り調査では、沖縄本島、八重山地方、奄美大島など三線文化圏を幅広く調査し、演奏家が所有する三線の来歴、(非演奏家)個人が所有する三線の来歴、移民・出稼ぎ地から戻ってきた「里帰り」三線の来歴などを明らかにした。 研究成果は論文及び口頭発表により報告した。12月には来年度森話社から刊行される共著書に大阪の三線文化に関する論文を投稿した。3月にはハワイからの里帰り三線に関する論文を掲載した共著書がミネルヴァ書房より刊行された(細川周平編著『日系文化を編み直す――歴史・文芸・接触』ミネルヴァ書房、2017年)。口頭発表は、東洋音楽学会、および日本音楽学会の全国大会で行った。東洋音楽学会の全国大会では、「三線が媒介する人間関係とその価値の推移――大阪の事例から」というタイトルで、沖縄から大阪へと三線がどのようなプロセスで渡ってきたのか、三線がいかなる人間関係、価値、感情を引き出してきたのかについて報告した。日本音楽学会の全国大会では「『里帰り』三線――楽器の移動と積み重なる価値」というタイトルで、沖縄からハワイへとどのような流通経路で三線が渡ったのか、ハワイに渡った後、再び沖縄へと戻っていった「里帰り」三線に、どのような意味や価値が付与されてきたのかについて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、沖縄での現地調査も順調に進み、沖縄芸能関係者、三線職人へのインタビューも順調に進んだ。また大阪の沖縄出身者社会での状況を明らかにすることにより、ハワイの状況との比較検討が可能になった。よって当初の計画以上に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果を踏まえ、今後は次のような点を課題とする。1)三線音楽の社会的な価値付けの変化に伴う、三線の価値観、及び製作、流通、市場の変容、2)三線の里帰りをもたらしている三線への価値観の解明、3)ハワイと日本本土や南米など他の移民出稼ぎ地との三線文化の比較。
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