研究実績の概要 |
数理生物学の基礎方程式であるKeller-Segel方程式系は多くのパラメータを有し,その取り方によって半線形型,退化型,特異型が現れる豊富な構造を内在している.同方程式系は,放物-放物型および放物-楕円型に分類されるが,ともに重要な研究対象であり,適切性を論じる際それぞれの特性に応じた解析が求められる.平成29年度は,(特異型)Keller-Segel方程式系と,(半線形)Keller-Segel方程式系を流体力学の基礎方程式であるNavier-Stokes方程式と連立した方程式系(以降,流体型走化性方程式系と呼ぶ)について,特に正則性の観点から考察し,以下の(i)-(ii)の成果を得た. (i) (特異型Keller-Segel方程式系の弱解のHoelder連続性) 特異型移流拡散方程式系の弱解についてHoelder連続性を示した.典型例として,特異型Keller-Segel方程式系の弱解のHoelder連続性が示される.更に,弱解が時間無限大において減衰する場合には,Barenblattの自己相似解に収束することを示した. (ii) (高次元における流体型走化性方程式系に対する強解の存在定理) 3次元以上のEuclid空間において,流体型走化性方程式系の初期値問題の時間局所軟解を尺度不変な関数空間に一意に構成した.小さい初期値をもつ解については,解が時間大域的に存在することを示した.また,古典的なKeller-Segel方程式系の場合,初期値に(尺度不変ではあるものの)可微分性を課すことで,強解の存在定理が確立されている.我々は,新たな「Sobolev空間H^{s,p}における双線型評価」の導出をすることで,Keller-Segel方程式系のみならず流体型走化性方程式系に対しても強解の構成には,初期値の可微分性がredundantであることを示すことに成功した.
|