本年度は光干渉計を用いた自然対流可視化実験とLarge Eddy Simulationを用いた数値解析との比較を行い,表面ふく射及びガスふく射が自然対流の内部の熱流動特性に及ぼす影響を評価した. 自然対流可視化実験では,庄司らによって開発された大型位相シフト光干渉計を用いた.観察する対象は非対称加熱壁を有するキャビティ内部で生じる自然対流場とした.本研究では,表面およびガスふく射効果が自然対流に及ぼす影響を切り分けるために,表面ふく射効果測定実験とガスふく射効果測定実験の二種類の実験を行った. 表面ふく射効果測定実験では,キャビティ内部の断熱壁上下部のふく射特性を変化させ,表面ふく射効果が内部の温度勾配に及ぼす影響を評価し,高放射率によって上部断熱壁近くの温度勾配が高くなることを示唆した.数値計算との比較によって,上部断熱壁で熱伝導効果を考慮する必要性があることを示した. ガスふく射効果測定実験では,ふく射吸収が強いトリフルオロメタンガス(CHF3)を使用してガスふく射効果が自然対流の流動場に及ぼす影響を評価した.本ガスを使用することによって,空間スケール10-50 mオーダーの大気のふく射吸収量を実験室スケールで再現することが可能となる.実験で取得された干渉縞と数値計算で再現した干渉縞の時間変化を比較することで,ふく射効果によって変動する温度境界層を評価した.実験の結果,加熱壁近くの温度境界層がふく射効果によって不安定となりFujiiらによって示唆された初期の渦列流に相当する波状の流れが観察された.本不安定性はガスふく射効果を考慮した時のみ、数値計算でも観察することができた.本結果から,ガスふく射効果によって自然対流の流動不安定性が促進されることが示唆された.さらに,上部断熱壁付近での干渉縞を観察することによって,ふく射効果によるキャビティ内部の循環流促進も示唆された.
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