白金(Pt)担持グラフェンは燃料電池の電極触媒材料として知られている。しかしPtは凝集して触媒効率が劣化するという問題があり、特に高機能化・高活性化が期待されている1 nm以下の原子やクラスターに関する実験報告例は極端に少ない。本研究では金属/グラフェンの構造を原子レベルで制御し少量で高活性な触媒材料とすることを目的として、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて金属/グラフェンの構造・挙動及び電子状態の原子分解能観察を行った。 昨年度末に申請者は走査型透過電子顕微鏡法(STEM)により、数個~数十個の原子からなるCuクラスターがグラフェン上で2次元平面状に規則的に並んでいく様子を捉えた。更に、電子エネルギー損失分光(EELS)によりこの2次元結晶は酸素を含むことが分かった。ロシアの理論研究グループと共同でこの特異な2次元結晶構造の安定性や特性に関して解析し、学術誌(Nanoscale)に論文を投稿・受理された。 また、2015年度の成果である「Cu単原子によるグラフェンの再構成」について更なる実験・解析を行い、Pt原子との違いを比較した。加熱環境下において電子線を照射すると、Cu原子はグラフェンを修復し、Pt原子はエッチングするという正反対の変形過程が見られた。この結果について学術誌(Applied Physics Express)に論文を投稿・受理された。 以上、TEM/STEMによる実験結果の解析及び理論研究グループとの共同研究により、学術誌2誌での論文発表を行うと共に、博士学位論文を執筆した。更に、カナダの研究グループとの共同研究により、海外での研究活動も行った。
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