研究課題/領域番号 |
15J04185
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
木場 裕紀 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | ダンス教育 / 女子体育 / 芸術教育 / マーガレット・ドゥブラー / 進歩主義教育 / アメリカの芸術政策 |
研究実績の概要 |
人間の身体をメディアとするダンスは、体育的要素と芸術的要素を併せ持ったマージナルな領域である。本研究では当初、日米両国において異なる歴史的変遷を遂げてきた学校教育におけるダンスの歴史的変遷を、両国の政治的文化的要因に着目しながら描き出し、双方を比較することで異なる変容を遂げた理由を明らかにすることを目的としていた。このような観点から、日米両国のダンス教育において先駆的な役割を果たした松本千代栄とマーガレット・ドゥブラーの人物史に迫った比較研究を行ったほか、教育を取り巻く社会一般におけるダンスの状況を明らかにすべく、日米両国の代表的なダンスカンパニーの運営状況について調査を行った。これらの研究成果については国際学会において発表を行った。 しかしながら、日米両国の置かれている状況は、比較が不可能であるほど著しく乖離していることが次第に明らかとなり、受け入れ研究者とも相談した結果、アメリカの高等教育におけるダンスの歴史的変遷を、その政治的文化的要因に着目しながら描き出す方向へとシフトチェンジを行った。 夏以降はアメリカで最も長い歴史を持つダンス・プログラムであるウィスコンシン大学マディソン校ダンス学科の歴史的変遷について調査すべく、同校のアーカイブ資料の収集・分析に多くの時間と労力を費やした。その中で同校に世界で初となるダンス専攻を設置したマーガレット・ドゥブラーの残したメモや同校ダンス・プログラムの教職員会議録など多くの一次資料を入手することができ、その成果の一部について国内学会において発表を行った。アメリカの高等教育機関におけるダンスが、高等教育や芸術政策などの政治的文化的要因にどのように影響を受けながら変容して行ったのかを明らかにする作業を今後も継続して行っていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の当初の目的は日米両国の学校ダンスの歴史的変遷を、両国の政治的文化的要因に着目しながら描き出し、なぜ日米両国において学校ダンスが異なる歴史的変遷を遂げてきたのかを明らかにすることであった。しかしながら、調査を進めるうちに日米両国の学校教育制度は比較が著しく困難であるほど乖離していることが明らかとなったため、研究の対象を絞り、アメリカの高等教育機関におけるダンスの歴史的変遷を明らかにすることへと研究目的を変更した。 このような変更を受け、初年度は必要な一次資料の収集・分析に取り組んだ。調査対象校はアメリカ・ウィスコンシン大学マディソン校とした。同校は1926年にマーガレット・ドゥブラーのリーダーシップのもとで世界初となるダンス専攻が設置され、以来長年にわたってアメリカを代表するダンス・プログラムを提供したきた。同校のアーカイブを訪れ、豊富な一次資料を収集することができたこと、またその成果の一部についてまとめ、国内学会における口頭発表を行うことができたことから、現在までの研究状況は概ね順調に進展していると自己評価している。 また、海外調査後は収集した資料の分析を進め、現在、マーガレット・ドゥブラーのダンス教育論に関するもの、及びダンス教育の制度化の歴史的意義について考察したもの、計2本の小論を執筆中である。今後その成果を口頭発表及び学術誌への投稿という形で公表していく。さらに、体系的な成果として博士論文の執筆を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
現在までのアメリカの高等教育機関におけるダンスの歴史的変遷について、調査を進めている。今後は初年度に入手した一次資料および二次資料の分析および論文執筆を進めていきたい。 具体的には、ウィスコンシン大学マディソン校のダンス・プログラムの歴史的変遷を、当時の政治的文化的状況と関連付けながら記述・分析することで、アメリカの高等教育機関におけるダンスがどのように変遷してきたのかを明らかにしたい。すでに論文の作成に着手しており、研究成果については、国内外の学会で口頭発表および論文の形式で発表をする予定である。すでに、7月に韓国で行われる国際学会での研究発表申し込みを行い、発表が決定している。また博士論文の執筆も鋭意進めているところである。 追加資料の収集のため、夏以降にアメリカの高等教育機関を訪れる予定である。具体的にはウィスコンシン大学マディソン校のほか、ニューヨークおよび西海岸の代表的な高等教育機関を訪問し、資料の収集を行う予定である。また分析に必要な文献・二次資料についても随時収集を進める予定である。
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