本研究は、カマイルカの生物指標としての有用性に着目し、生態系の構造の異なる北海道の日本海側と東部側の2海域において、本種の分布する餌・物理環境、他種との餌資源をめぐる直接的・間接的な競争の影響の把握と比較により、生態系の変動に対するカマイルカの分布変化を検証することを目的としている。昨年度の調査は主に、北海道東部海域において北海道大学練習船うしお丸を用いた目視調査による鯨類の分布環境や餌環境の調査、バイオプシーサンプリングによる食性調査を行った。目視調査では、カマイルカを計49群584頭発見し、カマイルカは根室湾付近や北海道南東部沿岸海域に分布していた。また、分布環境としては水深の浅い海域を利用しており、表層での餌生物が多い海域を利用していた。一方、カマイルカとニッチが類似していると考えられたイシイルカは42群189頭発見され、北海道南東部沖合や羅臼周辺を利用していた。分布環境はカマイルカよりも水深の深い海域、中深層の餌生物が多い海域を利用しており、空間的ニッチの分割があることが明らかになった。また、2010年、2013年5月に日本海北部で得られたカマイルカの分布情報を、北海道東部海域と同様に解析した結果、北海道東部と同様に沿岸海域に分布していることが明らかになった。また、バイオプシー調査の結果、17個体分の皮膚サンプルを得ることができ、安定同位体比分析を用いて食性を推定する予定である。
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