今年度は、対象建物における空調システム(排熱投入型吸収式冷温水機、コージェネレーションシステム、集熱システム、デシカント空調機等)のモデル化を行い、対象システムにおける最適運用の提案を行い、その成果を論文として発表した。シミュレーションツールはLCEMツールを一部変更しながら活用している。 最適運用方法の提案として、①室内温湿度条件によるデシカント空調機の予冷コイル出口空気温度の設定、②冷水出口温度及び冷却水入口温度の設定、③太陽熱利用システムの制御条件という3つの課題に対して、検討を行った。 ①の検討により、デシカント空調機で処理できる負荷に対して各コイル熱量の和が最小となるかを明らかにし、これにより設計及び運用時にデシカント空調機の推奨すべき設定点を明示した。 ②は、冷水出口温度の高温化や冷却水入口温度の低温化は、吸収式冷温水機自体の効率は向上するものの、ポンプ動力の増加及び冷却塔ファン動力の増加につながるため、システム全体での検証が必要であった。この検証により、想定した建物負荷と外気条件における省エネルギー性能が最大となる冷水温度と冷却水入口温度の設定を明示した。さらにこの検討により、対象システムが、CGSや太陽熱からの供給熱量と排熱投入型吸収式冷温水機とデシカント空調機の再生コイルで利用される需要熱量のバランスを自力で保つことができるセルフバランスシステムであることが示された。 ③は②で示されたセルブバランスシステムに対して、太陽熱を最大限利用を可能とするような制御方法の提案を行っている。セルフバランスシステムに対しては、固定値で太陽熱利用の制御を行うのではなく、相対値で制御する方法が有効であることを示してる。
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