研究課題
この10年で、ヒトやマウスの大規模なゲノム解析が進み、タンパク質をコードしないnon-coding RNA (ncRNA)の存在が明らかとなった。この中でも核内に存在する200塩基以上の長さをもつ核内long-ncRNA(long ncRNA, lncRNA)は遺伝子発現などを調節する因子として、免疫応答などのストレス刺激時の制御に働いていることが考えられていたが、免疫応答におけるlncRNAの関与については全く知見がなかった。申請者は、博士課程においてウイルス感染時においてlncRNA NEAT1によるウイルス感染応答制御が存在することを発見した。一方、細菌感染症におけるlncRNAの役割については一切解明されていない。また申請者は先の研究を通して、lncRNAの量的制御が生理的に重要であることに注目した。lncRNAはタンパク質に翻訳されないので、lncRNAの量的制御は転写と分解に依存している。しかしながら、lncRNAの分解機構についての知見は全くない。申請者は当該年度において細菌感染によってlncRNAの一部が発現上昇が見られ、それは転写段階の制御ではないことをChIP-qPCRによって見出した。また、BRIC法もしくはActDチェイス法によって分解が抑制されていることを見出した。以上の結果からサルモネラ感染によってNEAT1の分解の抑制が起こり、発現上昇したNEAT1が下流の遺伝子発現を変化させ免疫応答を引き起こしているのではないかと仮説を立てた。
1: 当初の計画以上に進展している
現在までに、長鎖非コードRNAの分解に関与する新規複合体を見出した。これは予想外の発見であり、非常に大きな成果であると考えられる。
これまでに見つけた、新規RNA分解因子がどのように長鎖非コードRNAの分解に関与しているかを明らかにする。具体的には、新規RNA分解因子とこれまで報告がある分解複合体との結合アッセイ、RNA結合アッセイ、またグリセロールグラジエント法を用いた複合体解析を行う。さらに結合ドメインの解析も行う。また、細菌感染時に分解複合体がどのようになっているかを明らかにする。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)
BMC genomics
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Nuclear Bodies and Noncoding RNAs: Methods and Protocols
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