研究課題/領域番号 |
15J04318
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
今村 亮俊 千葉大学, 大学院薬学研究院, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 核内RNA分解 / 長鎖非コードRNA / 細菌感染 |
研究実績の概要 |
近年、タンパク質をコードしないnon-coding RNA (ncRNA)の存在が明らかとなった。この中でも核内に存在する200塩基以上の長さをもつ核内long-ncRNA(lncRNA, 長鎖非コードRNA)が,遺伝子発現制御に直接関与していることなどが明らかとなりつつあり、lncRNAが様々なタンパク質と相互作用することで、複雑なゲノム情報発現ネットワークを形成すると考えられている。一方、細菌感染症における核内lncRNAの役割については一切解明されていない。lncRNAはタンパク質に翻訳されないので、lncRNAの量的制御は転写と分解に依存している。しかしながら、これまでlncRNAの転写調節機構の研究は非常に多くなされているが、核内lncRNAの分解機構についての研究は少ない。核内lncRNA分解に関与する複合体としてエキソソームが知られていた。エキソソームは真核生物において主要な3' - 5'エキソヌクレアーゼ活性を担う巨大複合体であり,RNA 代謝の様々な局面において中心的な役割を担っている。ターゲットRNAの認識には、アクセサリー複合体が必要であることが明らかにされてきた。核内エキソソームのターゲットRNAの認識に関与するアクセサリー複合体は、NEXT及びPAXT複合体が知られているのみで、その他ターゲットRNAの認識に関与するアクセサリー複合体及びその重要性は十分明らかにされていない。 申請者は、細菌感染によって、エキソソームアクセサリー複合体の崩壊が引き起こされ、その結果、核内RNAが蓄積し、細菌感染抵抗性を獲得することを見出した。また、新規エキソソームアクセサリー複合体を発見した。核内lncRNAの分解制御について解明されたことはこれまでなく、本研究を通じて、核内lncRNAの分解制御機構及び、それが関与する生体応答を発見出来たと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者の見出した新規核内エキソソームアクセサリー複合体のターゲットRNAを見出すことが出来た。また、これらターゲットRNAが新規核内エキソソームアクセサリー複合体と結合すること、これまでの核内エキソソームアクセサリー複合体との結合様式の違いについて検討を行った。 また、核内エキソソームアクセサリー複合体の消失に関与するプロテアーゼの同定のためのコンストラクトの作製などが全て完了した。
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今後の研究の推進方策 |
細菌感染によって引き起こされる核内エキソソームアクセサリー複合体の2つの因子の消失に関与するプロテアーゼの同定のために、以下の3つの方法を実施する。 ①siRNAスクリーニングによるプロテアーゼの同定;ヒトには約600種のプロテアーゼが存在している。これらをノックダウンし、細菌感染時に核内エキソソームアクセサリー複合体の消失が抑制されるかを検討し、プロテアーゼ同定に取り組む。 ②BioIDを用いたプロテアーゼの同定;核内エキソソームアクセサリー複合体の構成因子にBioIDを結合させ、細菌感染依存的にビオチン化されるタンパク質を質量分析により見出す。 ③プロテアーゼの切断に必要なドメインの決定;プロテアーゼによって分解されるのに必要なドメインを見出すために、各種ドメイン欠損体を作出したので、これらの恒常的発現細胞を樹立し、感染実験を行う。
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