研究実績の概要 |
平成27年度は,漢字迷路課題を抑うつに特化した課題へと改良し,ACT(Acceptance and Commitment Therapy)の中の脱フュージョンの効果測定の課題として妥当であるかをIRAP(Implicit Relational Assessment Procedure)と質問紙との比較を通して検討した。 まず,抑うつに特化した漢字迷路課題を開発するため,鈴木(1999)を参考に,抑うつ感情を喚起する63語の二字熟語を選定した。次に,選定した二字熟語を使用して,抑うつに特化した漢字迷路課題を開発した。さらに,この課題の妥当性を関係フレームづけと,非柔軟性の2つの側面から検討するため,IRAP,Cognitive Fusion Questionnaire(CFQ), Ruminative Response Scale(RRS), Beck Depression Inventory-II(BDI-II)と比較した。 関係フレームづけの側面から検討した結果,漢字迷路課題の反応時間とBDI-IIとの間に有意な負の相関が得られた(r = -.293, p <.05)。これより,反応時間は,関係フレームづけを反映した指標ではないが,抑うつの程度を反映した指標であることが示された。非柔軟性の側面から検討した結果,漢字迷路課題の非柔軟性得点とIRAPとの間に有意な負の相関が得られた(r = -.373, p <.05)。これより,漢字迷路課題で測定される非柔軟性とIRAPにおいて測定される非柔軟性は互いに逆の関係にある別の概念であることが明らかとなった。以上より,関係フレームづけと非柔軟性の両側面において,IRAPでは測定できない部分を漢字迷路課題にて測定可能であることが明らかとなった点において,本研究は重要な意義を有している。
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