当該年度は高速スキャンで計測したカルシウムイオン濃度変化の空間的な応答の解析を試みた。 顕微内視鏡で記録する通常スキャンの時間分解能は1フレーム50 msほどだが、高速スキャンで1スキャンを約400倍に向上させ、1スキャンにかかる時間を132 micro secに向上させた。しかし、時間分解能を向上させても、擬似パルス・エコー音の組み合わせに対する特異的な聴覚応答が見られなかった。高速スキャンでの解析は、スキャンライン方向で平均を算出していたため、空間情報がなくなってしまっていたため、特異的な応答があったとしても埋もれてしまっている可能性があると考えた。そこで、高速スキャンにおいても、空間的な応答の違いを確認するために、スキャンライン方向での平均を行わずに解析を行った。その結果、高速スキャンでも空間的な応答の違いを発見することが出来た。同一スキャンライン上の応答でも、空間的な違いがあり、位置によってカルシウム応答のピークがミリ秒単位でことなることを確認することが出来た。また、この解析方法によって、電気生理学的応答で報告されている下丘における深さ方向の周波数特性の変化をカルシウムイオン濃度で空間的に確認することが出来た。これにより、今までの解析では擬似パルス・エコー音の組み合わせにおいて、特有な変化が見られなかったが、時空間的な応答を解析することで、カルシウム応答においてパルス・エコー音の時間差に応答する箇所を発見できる可能性が期待できる。 以上の成果と、昨年度の成果を投稿論文としてまとめており、現在、投稿準備を進めている。
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