研究課題/領域番号 |
15J04444
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
村手 宏輔 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | テラヘルツ波 / 広帯域波長可変光源 / 分光イメージング / 非線形光学 |
研究実績の概要 |
透過性、直進性、試薬類に指紋スペクトルを有するなど優れた特徴を有するテラヘルツ(THz)波だが、未だに実用的な測定システムが無い。そこで私はTHz波の実用化を目指し、これまでにダイナミックレンジ7桁という優れた性能を有する光注入型THzパラメトリック発生検出システムの開発に成功した。さらにこのシステムの検出方式はコヒーレントなTHz波のみに感度を有するため、測定ターゲット中を直線的に透過した成分のみを計測し、散乱光は計測しないという、理想的な高精細イメージングが可能となる。本研究では、この新方式の長所を活用した透過型CTおよび分光イメージングを実現し、プラスチック製品やセラミクス製品内部の欠陥検査、小包や厚手の郵便物内に隠された禁止薬物や爆薬検出、調剤薬局での処方箋ミス検出などのTHz波に求められる様々な社会的ニーズに応え得るシステムを実現することを目的とする。 その目的のもと、平成27年度はヘテロダインTHz-CT/分光システムの開発において最も重要である、テラヘルツ波光源の光注入型テラヘルツ波パラメトリック発生器(is-TPG)のさらなる高性能化として波長可変域の拡大を目指した。テラヘルツ波発生用結晶配置から根本的に見直すことで、結果として従来では難しかった3THzよりも高い周波数まで出力できるようになり、0.6-5THzと実に1桁の波長可変性を実現した。また、ヘテロダインTHz-CT/分光システムのデモンストレーションとしてis-TPGを用いたイメージング系を構築し、遮蔽物下の分光イメージング実験や単一波長での三次元テラヘルツ波CT測定を行った。従来では難しかった厚手の遮蔽物下の試薬同定に成功し、さらに単一波長ではあるが、プラスチック製品の内部欠陥を三次元でイメージング出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
is-TPGの出力はここ数年で大幅に拡大した一方で波長可変域は0.6-3THzで、これまで15年以上改善されておらず、ヘテロダインTHz-CT/分光システム含め、今後の応用を考えるとその拡大は急務であった。そこで、平成27年度はテラヘルツ波光源の高性能化を目指して研究を行い、0.6-5THzと実に1桁の波長可変性を実現した。また、既にイメージング測定も行っており、二次元での分光イメージング、三次元でのCT測定なども、まだ改善の余地は残っているものの画像取得が出来、概ね順調に研究は進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は本システムのさらなる高性能化として測定時間の短縮を目指す。is-TPGは波長可変域光源ゆえに1パルスで1波長の測定しか出来ず、測定時間が長くなるといった問題があった。CTなどのイメージング測定では、単一波長でさえ時間がかかり、波長も振ったイメージングは測定時間の関係で難しかった。そこで、多波長発振化を行い、1パルスでの広帯域分光実現を目指している。具体的にはis-TPGに用いるシード光を多波長なものを用いてテラヘルツ波も多波長発振化する。ただ、この際に各波長間で利得の食い合いが起き、テラヘルツ波が不安定になる事が予想される。いかに安定的な多波長なテラヘルツ波を発生できるかが本研究の鍵となる。 多波長発振が実現した後は、その光源を用いてヘテロダインCT/分光システムを構築し、測定時間、解像度、透過性などの評価を行い、測定システムとしての実用化を目指す。
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