研究課題/領域番号 |
15J04594
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
若野 綾子 大阪大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | 利他性 / モニタリング / ワークモチベーション |
研究実績の概要 |
研究目的は「モニタリングが機能する条件を調べ、開発途上国の公共サービスの質の改善に政策的な示唆を得ること」を目指した。結果として、2点の研究成果を挙げることができた。 1点目には、開発途上国の行政サービスや援助プログラムを実施するスタッフのワークモチベーションを調べた。特に、プログラム実施者の社会的選好がワークモチベーションに作用して、パフォーマンスを上げる可能性について調べた。具体的には、データセットは、農村家計に対する援助プログラムの政策評価として、申請者が収集したカンボジアの農村データセットを使用した。行動経済学的知見を活かして、プログラム実施者の「社会的選好」を実験によって抽出し、「選好」が外生変数であると仮定して、「社会的選好」の変動が農家のプログラム参加率と参加回数の変動に対して、どれほど説明力を持つかを調べた。結果、プログラム実施者が「利他的」であればあるほど、政策を受けたグループ内の人々はプログラムに参加することがわかった。本研究は、すでにJournal of Development Studiesに掲載が決まっている。 2点目には、政府教員と地元雇用教員というモニタリングのレベルが異なる教員が、子どもの学力に対して与える影響を調べた。子どもの学力は、教授の努力水準と能力に影響されると仮定する。そして、努力水準は、モニタリングのレベルによって変化する。この場合、モニタリングのレベルが相対的に高い地元雇用教員が子どもを教授した方が、子どもの学力に対しては正に影響するのではないかと、考えられる。そこで、地元雇用教員が全教員に占める割合と学力の関係を調べた結果、低学年では地元雇用教員の影響は学力に対して、正に影響していることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究課題は予定とおり、進展をしている。具体的な研究成果として、以下の2項目を報告する。 ①論文投稿:これまで執筆してきた2本の論文を投稿して、海外雑誌に投稿しており、結果2本とも出版することが決定した。1本目はSusainable Development、2本目はJournal of Development Studiesである。 ②学会発表:国内では4回、海外では2回の学会発表の機会を頂き、貴重な助言やコメントをいただくことができた。それらを反映して、論文を再投稿することを繰り返したところ、出版することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、1年目に収集したデータセットを使用して、実証研究を行っていきたい。具体的には、ベトナムの家計調査によって収集したデータである。ベトナムの家計調査に関しては、ベトナム中部のTT Hue県の郊外に存在する、少数民族の家計に対して、行動経済学的な説明を行ったアンケート調査を行っている。この家計調査の特徴は、長期的に連続して家計を調査することで、パネルデータを収集し、観測的な時間に一定な異質性を排除した推計を試みる点である。研究トピックは、経済学的に重要な家計行動を行動経済学的な視点で分析する。具体的に、①貯蓄と消費の選択に対して、時間選好が与える影響と、②村の中でのLenderとBorrowerの関係に関する社会的選好が与える影響である。
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