本年度は、最適間伐スケジュールの探索に有効な焼きなまし法の実装方法を検討した。複数の収益モデルを使いながら、探索性能に関係する要素(冷却関数、提案分布など)について二項対立的な比較対象を設定し、全ての実装を同時に比較することで、いずれの要因が探索性能に大きな影響を与えるか評価した。特に、①最良性能、②メタパラメータの変更に対する探索性能の感度、の両面から評価するために、①最良のメタパラメータ(焼きなまし法自体のパラメータ、すなわち初期温度や終了温度など)を用いたときの探索性能、②試した全てのメタパラメータにおける探索性能の変動、の2点を比較・検討した。 その結果、最良性能については制御変数の扱い方が、探索性能の感度については提案分布のタイプが強い影響を持つことが分かった。前者については、各間伐候補年の間伐率を制御変数として扱うよりも間伐後の残存木本数を制御変数とした方が、複雑な収益モデルに対しても安定した探索性能を与えることが分かった。非現実的な低密度状態などを含む伐採スケジュールは、数値的に最適解となったとしても実務的には採用できないので、間伐率や主伐時の立木本数には制約条件が必須となる。この制約条件は間伐率を制御変数として用いた方が単純で扱いやすいが、前述の結果より、複雑な制約式を採用してでも残存木変数を制御変数として扱うべきであることが分かった。次に探索性能の感度は、提案分布に正規分布を用いるときよりもコーシー分布を用いた方が低いことが分かった。この結果は一見、単純に候補状態の幅が広い方が良いことを意味しているように見えるが、標準偏差の大きい正規分布を提案分布に用いても、同様の特徴は現れなかった。すなわち、コーシー分布の持つ特徴(大きな外れ値を生成すること)が、メタパラメータの選び方に関する頑健さに寄与すると言える。
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