研究課題/領域番号 |
15J04686
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
竇 新光 神戸大学, 人文学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | 明治小説 / 近代初期 / 東アジア(日中韓) / 比較文学 / 翻訳(翻案) / 伝播様相 / 受容様相 / 変容様相 |
研究実績の概要 |
1895年から1919年に至るまでの20年ほどの時期において、明治時代の小説作品は、翻訳や翻案を通して大量に中韓両国に伝わり、近代東アジア世界にで広範に受容された。本テーマの研究目的は、東アジア日中韓3国の近代初期文学の相互関連性、明治小説の東アジア的伝播(受容)様相の特徴を、当時の中韓両国における明治小説受容の共通点、相違点と変容様相に焦点を当てて明らかにすることである。(「東アジア(日中韓)比較文学研究という視座」、『世界の日本研究』2016年号、掲載決定済)まず課題の構成について述べると、本研究課題は二部・八章と体系的に構成されている。本年度は、第一部の第3章と第4章、第二部の第3章と第4章を執筆し、課題全体の約50%の進展を達成したと言えよう。 第一部は「巨視的データ論:全般作品のデータから見る明治小説の伝播」である。本年度は、近代初期の中韓両国における明治小説翻訳の量的変遷過程について比較分析し、「第3章 翻訳推移の比較:中韓の明治小説翻訳はどう変遷したのか」を執筆した。そして。近代初期の東アジア世界における明治小説の伝播の展開経路について分類・検討し、「第4章 翻訳経路の比較:明治小説の伝播は三ヶ国間で如何に展開されたのか」を執筆した。 第二部は「微視的ケース論:個別作品のケースから見る明治小説の受容」である。本年度は、明治家庭小説『不如帰』の中韓受容様相の論述を修正し、「第3章 『不如帰』:中←日→韓、中韓両国の分別受容の場合」を執筆した。そして、明治科学小説『鉄世界』の中韓受容様相を考察し、「第4章 『鉄世界』:日→中→韓、中国経由の韓国受容の場合」を執筆した。 以上の成果をそれぞれ論文にまとめ、大阪・京都・上海・北京・ソウル・香港で開催された国際学術会議で発表した。また、韓国へ渡航し、成均館大学における約3ヶ月間の研究活動を行い、翻訳目録を補完した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はまず、研究課題の展開方法と構成体系をより明確にすることができた。そして予定していた方向とは少し異なり、本年度は第一部と第二部を同時に推進する形となり、それぞれ50%ほどの進展を達成したと言える。第一部のデータ論の根拠資料となる翻訳目録(データベース)の作成は、細部の補完を完成するまで、更に時間を要すると判断した。 本年度は、韓国渡航の期間に、資料の調査・収集を行い、翻訳目録の韓国関連部分を補完する一方、韓国近代(翻訳)文学研究者たちと直接交流し、貴重な助言を受け、大きな収穫を得た。 本年度は日本、中国、韓国、香港で開催された国際学術会議に積極的に参加し、日本語・中国語・韓国語で合計8回の研究発表を行い、日中韓の関連分野の研究者たちから有益な知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、翻訳目録の補完・完成を推進する一方、研究課題の第一部「巨視的データ論」の第1章「翻訳総量の比較:中韓は明治小説をどれほど翻訳したのか」と第2章「翻訳対象の比較:中韓はどのような明治小説を翻訳したのか」、第二部「微視的ケース論」の第1章「佳人之奇遇』:日→中、中国受容・韓国不受容の場合」と第2章「『金色夜叉』:日→韓、韓国受容・中国不受容の場合」の執筆を行い、課題の完成を目指す。 資料収集のため、中国への短期渡航も計画している。 そして、次年度は学会発表よりは学術誌への論文投稿に重点を置きたいと考えている。
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