本研究では、大型有孔虫と造礁サンゴを対象に、共焦点顕微鏡による石灰化過程の観察を行ってきた。大型有孔虫に関する研究では、細胞形態をCalcein AMにより観察することが明らかになり、さらに、試薬の特性により生死判定も簡便に行えることができるようになった。また、石灰化に伴う細胞内の水素イオンの分布について、pH蛍光指示薬を共焦点顕微鏡下で使用することで、従来の報告より高感度で把握することが可能となった他、細胞内のカルシウムイオンの分布等についても、詳細に可視化する実験手法を確立しつつある。 サンゴの石灰化に関する研究では、コユビミドリイシの初期ポリプを使用して実験を行ってきた。研究期間内に、細胞膜を透過しない蛍光Calceinを海水中に溶解させたまま、サンゴの骨格形成過程を詳細に観察が可能な新しい実験手法を確立した。さらに、低毒性のpH指示薬を飼育海水中に溶解させることで、石灰化部位と海水のpH分布を可視化することに成功した。連続的なpHイメージングを行いながら、海水のpHを急激に低下さたところ、酸性化海水の流入と共に石灰化部位のpHが一端低下した後、サンゴが能動的に石灰化部位のpHを上昇させるといった、新しい生理現象を明らかにすることができた。 得られた成果は国内外を含む学会発表にて随時発表を行ってきたほか、プレスリリースによる発表も行った。また、アウトリーチ活動として、新聞やテレビによる報告も実施した。さらに、一般の方々に向けて、サイエンスカフェに話題提供者として参加した他、自然史学会連合において研究内容の展示を行った。
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