本研究は、国際難民保護レジームを事例として、国際レジームの複合化過程を解明することを目的とする。具体的には、1)国際難民保護レジームは関連アクターをどのように拘束するのか、2)レジームによる拘束のもとで、関連アクターはどのように新たな問題に対処し、アクター間で相互作用し合うのか、3)その結果、国際難民保護レジームはどのような複合化プロセスをたどるのか、それぞれの要因およびメカニズムを検討する。 研究手法は、A)紛争難民の保護、B)国内避難民(IDP)の保護、C)人権侵害・貧困・環境汚染など複合的な理由に基づく移民(複合移民)の保護、D)自然災害被災者の保護という4つの争点領域を対象として、各々過程追跡を行ったうえで、事例間比較を行い、国際レジームの複合化過程に関する事例限定的な一般化モデルを提示するというものである。 第2年度は、ア)A、C、Dに関する事例研究の遂行と、イ)昨年度提示した本稿の分析枠組みをBの事例で暫定的に検証した論文執筆に注力した。ア)については、ジョージタウン大学国際移民研究所(ワシントンDC)に2016年8月から2017年3月まで客員研究員として滞在する機会を得た。そこでは、米国国立公文書館において各事例に関する一次資料の収集を集中的かつ網羅的に行うと同時に、本研究に関連する研究者・実務家との聞き取り調査および意見交換を行った。なお、Dに関しては2015年4月に地震が発生したネパールでの現地調査を11月下旬に行った。イ)については、当該年度には刊行が間に合わなかったものの、査読付の学術誌より採録決定通知を受け取ることができた。 常勤研究職への就職が決まったため本年度が最終年度となったが、当初の研究計画を超えた範囲について分析を進めることができた。次年度は、人道ガバナンスという観点から本研究の成果をまとめ、研究書として刊行する準備を進めていきたい。
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