研究実績の概要 |
SiCは高い絶縁破壊電界強度、高い熱伝導率など、パワーデバイス応用に優れた物性値を有することから、SiC MOSFETは次世代パワーデバイスの候補として注目を集めている。しかしSiC MOSFETは、「SiC/SiO2の起源不明かつ高密度界面準位の存在」、「MOS反転層内のキャリア散乱機構に関する物理的理解の欠如」などの課題を抱えており、SiC本来の優れた物性を活かしきれていないのが現状である。 近年我々のグループでは、高濃度p型ボディ層 (Na > 5×10^17 cm^-3) を有するSiC MOSFETにおける顕著な移動度低下を報告した。高濃度MOSFETにおける移動度低下の起源は不明であり、実際のパワーデバイスにおいては高濃度ボディ層を用いる必要があることから、原因の究明が不可欠である。 本研究では、上記移動度劣化の起源を議論するために、高濃度p型 (10^17 < Na < 10^18 cm^-3) 4H-SiC (0001), (11-20), (1-100) 面MOS界面の伝導帯極近傍 (Ec > Et > Ec-0.01 eV) の界面準位密度 (Dit) をMOSFETの極低温ゲート特性 (サブスレッショルド特性) から評価した。結果として、結晶面によらずDitがAlの高濃度ドープで増大することを明らかにした。更に、高濃度p型ボディ層を有するSiC MOSFETにおけるチャネル移動度低下と、高濃度p型MOS界面におけるDit増加との間に線形関係を見出し、高濃度SiC MOSFETにおける顕著な移動度低下は、Si MOSFETの場合のように界面ラフネス散乱や不純物散乱によるのではなく、主に伝導帯近傍のDit増加に起因することを見出した。
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