研究課題
平成28年度は2017年4-6月の研究中断を経て、7月より研究復帰支援準備期間を申請し研究を開始した。2017年1月より、本格的に研究を再開している。また、研究復帰に伴い、2017年7月より京都大学iPS細胞研究所から京都大学大学院医学研究科に籍を移し研究を継続している。シーケンサーから出る膨大なデータの解析手法の修得は必須であり、受け入れ研究者の指導のもと、シーケンスデータの解析を行っている。前年度に確立した少数の細胞からのクロマチン構造解析技術を用いて、平成28年度は成人T細胞白血病の発がんメカニズムの解析を行った。ATL6例、健常人5例、ATL細胞株3種類のシーケンスを行い解析をした結果。ATLでは健常人とはオープンクロマチンの状態が大きくことなることがわかり、ATL特異的にオープンとなっている領域が3000箇所あることが明らかとなった。またウイルスのマイナス鎖にコードされるHTLV-1 bZIP factor (HBZ)のエピゲノムへの影響を調べた。データベース上にあるH3K27Ac ChIP-seqデータをROSE (Warren et al., Cell 153, 307-319, 2013)など既存のツールを用いて解析したところ、HBZの存在下では、スーパーエンハンサーの場所が大きく変化することが明らかとなった。これらのデータから、HBZなどのウイルスタンパク質が転写ネットワークを大きく変える可能性が示唆された。その中の特にforkhead box (FOX) transcription factor familyの1つに着目し解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
本研究で確立した少ない細胞からのオープンクロマチン領域の解析技術を用いて、前所属機関である京都大学iPS細胞研究所の他のグループとの共同研究が論文として3報発表された。また、本技術を用いて、これまで網羅的なオープンクロマチン領域の解析がなされていない、成人T細胞白血病(ATL)患者の解析を開始した。その結果、ATL特異的にオープンになっている領域が3000箇所検出され、その領域のモチーフ解析よりforkhead box (FOX) transcription factor familyの1つが検出された。この転写因子はウイルスタンパク質の1つであるHTLV-1 bZIP factor (HBZ)と結合することを免疫沈降法より確認しており、この転写因子や、それを含む転写ネットワークにウイルス感染がどう影響を及ぼすのか今後解析を行う。これらの解析は受け入れ研究者の指導を受け、自ら解析を行っている。
成人T細胞白血病でのオープンクロマチンの網羅的な解析を行うために、さらに症例数を増やす。また、HTLV1に感染しているがATLは発症していないキャリア段階での細胞での解析も行い、正常な細胞がヒトT細胞白血病ウイルスに感染することによりどのようにエピゲノムに変化が起こり、長い期間を経て発がんに至るのかの分子メカニズムを調べる。また平成28年度の研究で絞り込まれた転写因子をノックダウン実験やChIP-seqを行いATL細胞におけるその転写因子の重要性・機能を調べる。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件)
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