研究課題
ストライガは作物の根に寄生し、養分と水を奪い取って成長する寄生植物として知られている。現在、ストライガはアフリカの農業に大きな損害をもたらしており、その被害額は年間にして約1兆円にものぼるといわれている。ストライガはホスト植物が土壌中に放出している分子「ストリゴラクトン」を認識して発芽する。この仕組みを理解することはストライガによる農業問題の解決の糸口になると考えられているが、その鍵となるストリゴラクトン受容体および発芽にいたる分子メカニズムはこれまでほとんど分かっていなかった。本研究では、ストリゴラクトン受容体の同定および発芽メカニズムの解明を目指し、ストリゴラクトン受容体の働きを可視化する分子YLGを設計、合成した。従来の生物学的手法だけではストライガの発芽に関わるストリゴラクトン受容体を同定することは困難であったが、YLGを用いることにより10個のストリゴラクトン受容体を同定することができた。さらに、YLGの誘導体として合成したYLGWにより、ストライガの発芽過程におけるストリゴラクトンの受容を可視化することに成功した。ストライガが発芽する際のストリゴラクトン受容のダイナミクスを観察することで、ストリゴラクトンの新しいシグナル伝達機構を明らかにすることができた。本研究成果は、ストライガの発芽制御分子の開発を飛躍的に加速するため、ストライガによる農業被害の解決に貢献すると期待される。
1: 当初の計画以上に進展している
本申請者が設計、合成したYLGはストライガの発芽刺激活性(ストリゴラクトン様活性)と受容体の働きを蛍光により可視化する機能をあわせもつ発蛍光性ストリゴラクトンアゴニストである。この分子を用いることで、今まで同定することが困難であったストライガの発芽に関わるストリゴラクトン受容体を同定するだけでなく、発芽過程におけるストリゴラクトン受容体によるストリゴラクトン受容のダイナミクスを可視化することにも成功した。以上から満足な進展があったと考える。
今後の研究目標は、ストライガの発芽を小分子により制御することである。ストリゴラクトン受容体に結合する分子をYLGを用いて迅速探索することでストライガの発芽制御分子を開発する。
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Science
巻: 349 ページ: 864-868
10.1126/science.aab3831
http://www.itbm.nagoya-u.ac.jp/ja/research/2015/08/Yoshimulactone-Striga.php