低温ブランチング(LTB)処理したニンジンに対して高温加熱処理を行い、加熱時間の経過に伴う軟化傾向と酵素失活を調査した。これらの変化はいずれも反応速度式、Arrhenius式を当てはめることができ、活性化エネルギーなどの重要なパラメータを導くことができた。また、LTBと従来の高温ブランチング(HTB)を組み合わせた際に、ニンジンに内在するペクチンへ及ぼす影響についての評価を行った。ラマンイメージングを用いた手法では、ブランチング処理の有無に関わらず、細胞周囲のぺクチン分布を画像として表すことに成功し、処理による分布の変化がほとんど生じないことを示した。また、化学分析により、処理条件ごとのペクチン含有量に差が生じないことも示され、ラマンイメージングの結果と一致した。次いで、ペクチンの構造的な変化を評価するために、原子間力顕微鏡(AFM)によるナノ構造解析を行った。生試料から抽出したペクチンはマイカ基板上で緻密なネットワーク構造を形成することが明らかとなった。この構造は生試料にHTB処理を行ったものでは形成されず、この自己構築能力が細胞間結着力の維持に重要である可能性が示唆された。一方で、LTB処理を行ったものについては生試料と同等のネットワーク構造を示し、LTBとHTBを続けて処理したものでは多少緩みはあるものネットワーク構造を維持することが見出された。 本年度は、LTB処理を行った試料について最適な脱水凍結処理条件の検討についても行った。LTB処理した試料を熱風により脱水を行ったところ、設定温度50℃において40分ほどで初期値の70%程度まで重量は低下した。処理の有無により脱水速度に大きな違いは見られなかったものの、表面部分の乾燥が著しく外観品質の低下が懸念された。均一な脱水を実現するためには、マイクロ波や減圧といった脱水法を組み合わせる必要がある。
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