研究課題/領域番号 |
15J05004
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
阿加 賽見 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | こう電子制御プラズマ / 表面平坦化 / イオンソース / 低エネルギーイオン / スパッタ率 / 表面拡散 |
研究実績の概要 |
本研究全体目的は、原子レベルの平坦化表面の実現に大面積且つ均一なドライ研磨プロセスの開発である。そこで、H27年度からH28年度前半にかけて、表面平坦化に用いた光電子制御プラズマ(Photoemission-Assisted Plasma: PAP)イオンソースの気相反応の解明を中心に研究を進めてきた。プラズマ気相反応の解明として、電圧-電流測定法、ラングミュアープローブ法及びプラズマ発光分光法を用いて今までは解明されていなかったPAPの放電機構を調べた、 また、固体表面と衝突する際のイオンのエネルギー(Ei)が重要な指標になっている。上述のPAP放電機構の解明から、Eiを評価し、低Eiを有することが検証できた。現存のドライ研磨プロセスにおけるEiは100 eV ~ 2 KeVであるに対し、PAPは0.1 ~ 200 eVまで制御できる。現存のドライ研磨プロセスに比べ、材料表面にスパッタ効果によるダメージが少ないと分かった。本研究の平坦化目標である金属Cu、Auに対し、PAPのスパッタ収率を求めた。そこで、7 ~ 100 eVのAr+-PAPイオンソースを用いて測定した結果、10-5 ~ 10-2 atoms/ionのスパッタ収率を示した。この結果は、極めて低いスパッタ収率を示しているが、原子レベルの平坦化表面作成において無視できないことが分かった。しかし、Cuなどの自然酸化膜を有する基板材料は、低Ei衝突による表面拡散促進で平坦化する際、表面酸化膜及び炭素系汚染物を除去する必要があるため、上述のスパッタ効果が有用であると期待している。 現存のドライ研磨プロセスにおける高エネルギービームで原子レベルの平坦化が得られない問題がある。対して本研究では、低イオンエネルギーを用いて表面原子の拡散に必要なエネルギーを与え、原子レベルの超平坦化面の作成ができるところに重要性があると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に述べたように、本研究は原子レベルの平坦化表面のためのドライ研磨プロセスの開発が目的である。そこで、本研究の目的を達するため、研究内容を大きく二つに分けて実施している。一つは(目的①)、ドライ研磨プロセスである光電子制御プラズマの放電機構の解明。また、(目的②)光電子制御プラズマイオンソースが固体表面(特に金属表面)との相互作用の解明。H27度は目的①について研究を進んできた。全体的にはおおむね概要に述べたように目的①を達するため、順調に進んできた。しかし、当初予期していた電子エネルギー分布が重要と考えていたに対し、基板表面から出る光電子の変化量がプラズマ気相反応及び表面平坦化における重要な役割があると紫外線光電子分光法の測定結果から分かった。 そこで、H27年度の結果を踏まえて、H28年度の前半は、光電子分光法を用いて表面状態の観察を行い、プラズマ放電電流、Cu基板における、表面処理の粗さとの相関を解明した。H28年度の全体的目的②(特にCu, Au基板)の解明においても、光電子分光法による表面状態の研究及び上述した低イオンエネルギースパッタメカニズムについての解明は、本研究の全体目的に達するための重要なステップであることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的である原子レベルの平坦化表面作成のためのドライ研磨プロセスの開発を更らに研究すること。今後は光電子制御プラズマの固相反応として、プラズマ中のイオンが固体表面に衝突する時のエネルギー伝達率、ガス種依存の表面処理を行う。希ガスごとに質量が異なるため、表面に衝突する際のエネルギー伝達率が異なるため、表面平坦化の最適パラメータを探求する。また、これまでに得られた知見に基づき、光電子制御プラズマの表面平坦化へのモデルを作成する。各種材料表面における処理効果を定性的な評価を行う。最終的には光電子制御プラズマイオンソースによるドライ研磨プロセスを確立する。
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