本研究の全体的な目的は、原子レベルの平坦化表面の実現に大面積且つ均一なドライ研磨プロセスの開発である。そこで、平成29年度まで、表面平坦化に用いた光電子制御プラズマ(Photoemission-Assisted Plasma: PAP)イオンソースの気相反応の解明を中心に研究を進めてきた。 具体的には、電流―電圧測定法を用いて圧力依存及び電極間距離依存の放電特性解明について実験を行った。また、ラングミュアープローブ測定法を用いてプラズマの空間電位、電子温度及び粒子密度などのパラメータを解明した。以上の手法では解明できない粒子種の確定及び粒子種の存在確率は、プラズマ発光分光法を用いて明らかにした。これらの手法を用いて今まで解明されていなかったPAPの放電機構を調べた。さらに、プラズマ発光分光法の結果により、PAPイオンソースは低エネルギーイオン(0.1 ~ 200 eV)を有するという特徴に加え、中性原子ビームも有効であることが期待できる。 気相反応の解明を踏まえ、次は、PAPの金属表面との固相反応について研究した。固体と衝突する際、低Ei衝突の反応メカニズムの解明が平坦化に対して重要である。PAPイオン源の金属基板Cuに対するスパッタ収率を測定した結果、10^-4 atoms/ionということより、従来のイオン源よりスパッタ収率が低いが、Cu表面の酸化膜除去には十分であることが分かった。また、酸化膜ある表面は表面原子拡散には不利であることから、PAPイオンソースの放電機構解明の結果より、最適Eiを探求し、酸化膜除去ができた。酸化膜除去後に、Ei調整による表面拡散に必要なエネルギーを与え、金属原子の表面拡散を促進して原子レベルの平坦化表面が作成できるところに重要性があると考える。
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