本研究では土壌劣化の影響下にある乾燥地において、AM菌と根圏細菌の群集構造解析を通し、有用菌の探索や土壌劣化に伴う微生物群集構造の変化を捉えることを目的とした。トルコアンカラにて土壌劣化の程度が異なる3地域における自然植生に注目し、多年草3種、一年草4種の7植物種について、AM菌および根圏細菌群集構造のアンプリコンシーケンス解析を行った。 細根抽出DNAを鋳型に糸状菌ユニバーサルプライマーのみを使用したアンプリコンシーケンス解析では、AM菌DNAの増幅量が十分ではなかったため、1st PCRとしてAM菌のLSU-ITS-SSU領域を増幅させ、2nd PCRでITS領域を増幅させる方法を試みた結果、AM菌DNAを優先的に解析できることが示された。春季では多様なAM菌が検出されたが、一部の試料で著しく低いAM菌多様性が示された。このことに関して、今後プライマーの選択性等について再び検討する必要があると考えられる。また、現地土壌の培養及び保存は現在アンカラ大学にて継続しており、今後、現地の研究協力者と協働で資源化を進める予定である。 細菌群集組成については、地点・植物種間で多少の変動は見られるものの、門レベルではFirmicutes門、Proteobacteria門、Actinobacteria門が優占しており、属レベルではBacillus属、Rubrobacter属が優占していた。今後、Bacillus属およびRubrobacter属に注目することで乾燥地農業に貢献し得るPGPRの獲得につながることが期待される。細菌群集組成を比較した結果、土壌劣化の程度が大きい地点では他とは異なる群集構造を示し、この傾向は特に春季で大きかった。今後、試料採取回数を増やし、経時変化を捉えることで、乾燥地における土壌微生物の季節的変動と環境要因との関係を明らかにできるものと考えられる。
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