本研究ではHB-EGF抗体用いた不全心特異的にsiRNAを送達可能なベクターの開発を行っており、本年度は下記の研究を行った。 ①HB-EGF抗体結合ベクターの標的細胞の同定 蛍光標識HB-EGF抗体結合ベクターを不全心モデルマウスに投与し、標的細胞の同定を行った。その結果、HB-EGF抗体結合ベクターは線維芽細胞およびマクロファージを標的とすることが示唆された。しかし、マクロファージではFcレセプターを介した非特異的な結合が起きている可能性が示唆された。そこで、Fcブロックを用いてFcレセプターとの結合を阻害した実験を行った。その結果、線維芽細胞での蛍光強度に変化は見られなかったが、マクロファージで蛍光強度の低下がみられた。また、HB-EGF抗体結合ベクターはIsotype control抗体で作成したベクターに比べてマクロファージで蛍光を示すことから、マクロファージでは一部Fcレセプターと結合していることが明らかになった。 ②flow cytometryを用いた細胞分離法 これまでHB-EGFは心筋細胞で発現していることが報告されてきた。しかし、本研究ではHB-EGF抗体結合ベクターが線維芽細胞及びマクロファージに結合することから、これらの細胞でのHB-EGFの発現を確認するため、HB-EGF抗体での免疫染色を行った。しかし、所有しているHB-EGF抗体の免疫染色では再現性のある結果は得られなかった。そこで、心筋組織中の細胞を分離して各細胞でのHB-EGF mRNA発現量の比較検討を行うため、flow cytometryでの非心筋細胞の単離法の確立を行った。マーカーとなる遺伝子の発現量を比較した所、flow cytometryで血管内皮細胞と線維芽細胞の分離可能であることが明らかになった。しかし、マクロファージでは高い純度が得られなかったため、マーカーの選別が必要である。flow cytometryで単離した内皮細胞、線維芽細胞及び心筋細胞のHB-EGF mRNAの発現量を比較した所、線維芽細胞でHB-EGFの高発現している事が明らかになった。
|