研究課題/領域番号 |
15J05073
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
呼子 笛太郎 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
キーワード | Artin-Mazur高さ / カラビヤウ多様体 / F-分裂 / non liftableカラビヤウ |
研究実績の概要 |
今年度の主な研究実績について述べる。正標数の楕円曲線は通常型楕円曲線と超特異楕円曲線の二つに分類される。この分類は幾つかの同値な定義を持つが、その一つとして、楕円曲線に付随する形式群を用いるものがある。このことの高次元化として、カラビヤウ多様体のArtin-Mazur高さによる分類がある。これはカラビヤウ多様体に付随するArtin-Mazur形式群を用いるものである。Arin-Mazur高さは正の整数と無限大に値をとるものである。 3次元以上の正標数のカラビヤウ多様体は一般には標数0に持ち上げることができないことが知られている。これまで知られている持ち上げることのできない多様体のArtin-Mazur高さは無限大であることに注目した。高さが有限ならば標数0にリフトできると予想し、実際同じ仮定の元で長さ2のWitt環上にリフトできることを示した。照明のポイントはArtin-Mazur高さを別の言葉で特徴づけることである。Artin-Mazur高さ1のカラビヤウ多様体はFrobenius分裂することが知られていた。一般のFrobenius分裂多様体は長さ2のWitt環上にリフトできることが知られていた。そこで多様体の分裂高さを以下の性質を満たすように定めた。1)Frobenius分裂多様体の分裂高さは1、2)分裂高さが有限の多様体は長さ2のWitt環上にリフトできる。さらにカラビヤウ多様体に対しては、Artin-Mazur高さと分裂高さが一致することを示した。これらの結果は論文「Every Calabi-Yau variety of finite height can be lifted to W_2」としてまとめ、投稿し現在査読中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
カラビヤウ多様体のArtin-Mazur高さは1970年代から知られていたが、本年度別の特徴づけを得ることができた。高さはモジュライ空間の階層を定めるため、正標数のモジュライ空間の研究への応用が期待される。
|
今後の研究の推進方策 |
Artin-Mazur高さを用いたK3曲面のモジュライ空間の研究が桂利行氏とG.van der Geer氏により行われてきた。その研究において古典的な超特異楕円曲線に対するDeuring mass公式の高次元化とみなすことのできる公式を証明していた。分裂高さを用いることで、エンリケス曲面のモジュライ空間に対し同様の研究を行う予定である。
|