研究実績の概要 |
本課題研究は、非国際的武力紛争に関する武力紛争法諸規則についての体系的な検討である。2015年度は、特に、非国際的武力紛争の武力紛争法上の定義についての研究が深められた。この論点につき、非国際的武力紛争の定義を構成する烈度と組織性の二要件に着目して、旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所の判例分析が進められた。この研究成果は、「旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所による非国際的武力紛争の定義とその意義-タジッチ基準にみる烈度要件と組織性要件」と題して、『阪大法学』に投稿し、査読を経たうえで受理され、第65巻第3・4号(2015年)に掲載された。 また、この検討結果から、武力紛争法と国際刑事判例の関係の研究という論点についても考察を深め、この論点と関連する書籍について、2016年3月5日に京都大学に於ける国際法研究会にて、書評報告を行った(Shane Darcy, Judge, Law and War : The Judicial Development of International Humanitarian Law , Cambridge UP, xxv +396 pp.) 。本成果については、2016年度中に『国際法外交雑誌』にも投稿予定である。 また、2016年3月にカンボジアに渡航し、プノンペン近郊のカンボジア特別法廷、および領有権をめぐり隣国タイとの紛争の原因となり一時武力衝突が発生した地であるプレアビヘアなどを訪れた。カンボジア特別法廷では、カンボジアにおける非人道的行為についての事実認定の根拠の一つとなったイェール大学の調査報告書につき、資料の信用性について審議が行われており、裁判傍聴を行った。プレアビヘアでは、タイとの国境紛争の現状について視察し、タイとの緊張状態における被害の実態や現地の人々のインタビューなど行った。
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