研究課題
前年度に引き続き、日本で竜巻を発生させた台風の特徴を明らかにするため、気象庁の再解析データを用いた解析を進めた。本研究では、反時計回りの回転(メソサイクロン)を有する特殊な積乱雲(スーパーセル)から竜巻が生じたと仮定し、スーパーセルの発生ポテンシャルを表す2つのパラメータ、ストームに相対的な環境場のヘリシティ(SREH)と対流有効位置エネルギー(CAPE)を用いて竜巻を伴う台風の構造を調べた。SREHはメソサイクロンの回転の強さの指標、CAPEは積乱雲の上昇流の強さの指標である。1991-2013年の竜巻を伴う台風(Tornadic Typhoon:以下TT)とそうでない台風(Non-tornadic Typhoon:以下NT)を比較した結果、TTのSREHの方がNTよりも大きいことが分かった。この主要因は、TTの(1)台風強度が強いこと、(2)台風渦に重なる大規模場の風の鉛直シアが上空で大きいこと、(3)積乱雲の対地移動速度が速いことであった。一方、CAPEの計算に、積乱雲の上昇流が上空の空気を取り込む効果(entrainment)を加味したCAPE(Entraining CAPE:E-CAPE)も、TTの方が大きいと分かった。entrainmentを考慮しない通常のCAPEではTTとNTを判別できないことから、entrainmentの考慮が、スーパーセルの発生ポテンシャルの推定に重要であることが示された。本研究ではさらに、E-CAPEの計算に必要なentrainment率を明らかにするため、台風環境下のスーパーセルを再現するLarge Eddy Simulationを行い、スーパーセルのentrainment率(ε)が15-20%/km程度であることを確かめた。一方、ε=20%/kmとしたE-CAPEの分布は竜巻の発生位置の分布とよく一致しており、E-CAPEがスーパーセルのentrainmentの実態に基づく有効なパラメータであることが示された。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Geophysical Research Letters
巻: 43巻 ページ: 12,597~12,604
10.1002/2016GL070349
http://dpo.aori.u-tokyo.ac.jp/dmmg/people/k_sueki/top.html