研究課題/領域番号 |
15J05166
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三浦 達哉 東京大学, 数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 変分法 / 弾性曲線 / 自由境界問題 / 解の形状 |
研究実績の概要 |
平成28年度における主な研究結果は次のものである。 (1) 弾性曲線の付着問題に対する突出解の存在:引き続き、基板に付着する膜や細糸に関する一次元モデルの解析を行った。このモデルに関する先行研究においては、我々の文献を含め、基板がグラフであるときは解の候補もグラフ曲線のみに絞っていた。しかしながら、この仮定の妥当性に関してはこれまで不明瞭であった。今年度はこの妥当性に関する研究を行い、実際に次の成果を得た。基板を周期関数のグラフとし、解の候補はグラフとは限らない周期曲線であるとする。この設定の下でエネルギーの最小化問題を考える。このとき、物理定数や基板の形状から定まるパラメタに関して、最小化解のグラフ表示可能性が保証される十分条件、および突出解(グラフでない解)が大域最小化解になる場合の存在を証明した。証明は、周期曲線の形状の分類、およびエネルギー評価に基づく。 また上記の他に幾つかの研究も進行中である。 (2) 曲げ弾性が小さい場合の弾性曲線の形状:上記の問題において、基板が滑らかかつ「曲げエネルギーの効果が十分小さい場合」での解のグラフ表示可能性については証明されていない。これは、その直観的妥当性に反し、数学的な正当化が困難であることによる。本研究ではこの場合についても検討するために、まずはより古典的な弾性曲線の固定境界問題に関して研究を行った。この問題に関して、曲げエネルギーが小さい場合の最小化解の形状を考察し、あるリスケールされた意味での解の漸近収束を示した。 (3) 境界からの距離関数の特異点集合:昨年度にも行った切断跡(境界からの距離関数の特異点集合の閉包)の研究も引き続き進めた。昨年度はC1級境界に関し切断跡集合の特徴づけを得たが、今年度は境界に関する錐条件や球帽条件を詳細に検討することで、C1級の仮定はより自然な幾何学的仮定に拡張されることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請当時の目標であった界面の運動方程式に対する変分的アプローチに関しては達成できなかったが、付着問題に関しては当初想定していなかった新しい問題意識に関して一定の成果が得られ、また弾性曲線・切断跡の問題に関しても進展があったため、総合的には順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後も弾性曲線の問題について重点的に研究する予定である。特に研究実績の欄で述べた「曲げエネルギーの効果が小さい場合」に関して、付着問題の場合にも理解を深めていくことを目標とする。この研究にあたっては、古典的な弾性曲線問題に関する特異極限の視座からの理解が重要なステップになると考えられる。またこの見方が高(余)次元の弾性体問題に関しても適用可能であるかの検討も行っていく予定である。
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