研究課題/領域番号 |
15J05197
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中安 祐太 東北大学, 環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 超臨界流体還元場 / カルコゲナイド化合物 |
研究実績の概要 |
本研究課題の予備実験として、修士課程で研究対象としていたCu2ZnSnS4 (CZTS)薄膜をアモルファス酸化物薄膜から超臨界流体硫化法により作製した。その結果、良好な発光特性を得ることに成功した。また、反応場である超臨界流体の密度を変化させることにより、CZTS薄膜の粒径を制御することにも成功した。これらの成果を基に学会発表(国内2件, 国際3件)を行い、二件の受賞を頂くことができた。現在、学術論文を執筆中である。 これらの実験と並行して本研究課題であるMoS2およびWSe2の作製を行った。反応条件としては、CZTS薄膜の作製と類似条件から試行した。しかし、MoO3およびWO3の還元が進行しなかったため、還元剤としてNaBH4を超臨界アルコール中に溶解させることによって、還元を進行させた。その結果、それらの還元反応および硫化/セレン化反応が進行し、ナノシートフラワー状のMoS2およびWSe2の作製に成功した。現在、これらの固溶体の作製および二次電池の電極への応用を試行中であり、本年度の秋の学会で発表する予定である。 これらの反応諸条件を検討する上で、海底での化学反応を参考にした。海底において海水は超臨界状態となっており、特定の場所において硫化物が析出する。通常、含有酸素が多い海中では酸化物が生成するはずであるが、その領域ではある一定以上の有機物が混入しており、酸素は有機物と反応することによって、消費される。さらに、海底火山から噴出した二酸化硫黄や水中に溶解した硫酸は硫黄還元微生物によって還元され、硫化物イオンとなる。この硫化物イオンと海中の金属イオンが反応することによって、金属硫化物が生成する。本反応では、大気中の酸素が必ず含まれてしまうことを考慮し、反応溶媒を最初から有機物のみとし還元微生物の代替としてNaBH4を用いることによって、酸素含有の無いMoS2を作製することに成功した。これらの詳細な反応機構も今後は追っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画案通り、超臨界流体還元反応場を用いることによりMoO3およびWO3から硫化・セレン化に成功し、MX2 (M:Mo,W X:S,Se)の作製に成功した。現在、固溶体の作製/評価およびLiイオン電池の負極として応用を行っており、秋の学会で発表予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、以下の3点について進めていく。 ①超臨界流体中での反応機構の解明。特に原料は超臨界流体中に溶解しながら反応しているか否かを吟味する必要がある。 ②より詳細な材料の構造・光学特性評価 ③Liイオン電池の負極、水素発生触媒への応用
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